(台北中央社)ダンスや宙返りなど高難度の動作を披露するヒューマノイド(ヒト型ロボット)の姿が度々、SNSで話題を呼んでいる。人工知能(AI)搭載の3Dビジョンとロボット技術を開発する台湾企業ソロモン(所羅門)の陳政隆董事長(会長)は、これらのパフォーマンスと、工場生産ラインや物流倉庫、健康医療などで求められる機能は大きく異なると話す。同社は独自のロボット向けAIビジョン技術で、実際の作業の精度や効率の向上を支援している。
同社は米半導体大手エヌビディアのロボット開発におけるパートナーでもある。陳氏は中央社の取材に対し、ヒューマノイドが現場作業で人の代わりとして機能するには、現時点では「視距離の短さ」「学習速度の遅さ」「手先の不器用さ」といった課題があると指摘する。これらの弱点により、指令を理解できても、実際の環境下で任務の完遂が難しいケースが少なくない。
実際の現場でヒューマノイドの強みを生かすには①推論②遠距離での能動的知覚③動作—の三つの機能を同時に備えることが不可欠だ。中でも、マシンビジョン技術を基礎に能動的知覚を実現するAIビジョンソフトウエアは、ヒューマノイドの滑らかな動作と精度を支える鍵となる。
ヒューマノイドをより賢くするには、まずは訓練が必要となる。陳氏は、従来のAIモデルを用いた訓練では、対象物の色や形が少し変わるだけで任務の成功率が顕著に下がり、より多くのデータ学習が必要になると説明する。そこでソロモンは、生成AIを用いて大量の合成画像を生成し、AIモデルを訓練する手法を開発。訓練時間を短縮するとともに学習効率を高め、未知のデータに対しても的確に判断を下す「汎化」の能力を向上させた。
訓練に加え、「認識能力」も重要だ。同社の能動的知覚技術は「探す、選ぶ、ズームする、評価する」といったプロセスを採用することで、AIビジョンの感知認識能力を大幅に高めた。また、同社の能動的知覚技術とエヌビディアのオープンソース基盤モデル、AI推論能力を統合することで、AIが背景を人間と同じように理解することを可能にし、ヒトの限界に近い遠距離感知能力を実現した。同社が公開した展示エリアでは、5メートル先の計器の数値を読み取ったり、移動した物体を再検知したりする実演が行われた。
同社のAIビジョン技術は、既に日本や米国などのヒューマノイド関連製品や四足歩行ロボット、ドローン(無人機)、ロボットアームなどに導入されている。台湾南部の太陽光発電設備では、ドローンを用いた「スマート点検」に同社の技術が活用されている。
陳氏は台湾のヒューマノイド技術と応用発展の展望について、ソフトウエアの進化はハードウエアより早く、ハードウエアの開発が実を結ぶのは早くて2028年以降だと予測する。実用化はまずは物流倉庫に始まり、実際の作業のニーズや安全面から、上半身はヒト型、下半身は車輪型のロボットが導入されるとの見方を示した。




