(下呂中央社)国際芸術祭「下呂アートディスカバリー」が11日、岐阜県下呂市で開幕した。飛騨地方の伝説に登場する神「両面宿儺(りょうめんすくな)」をイメージして制作した作品「飛騨神話遺跡―両面宿儺 神竜退治」を出展した台湾人アーティスト、涂維政さんは「台湾のアーティストから下呂市へのプレゼントだ」と語っている。
同芸術祭には世界14カ国・地域から59組のアーティストが参加した。温泉、古い町並み、総ヒノキ造りの廃校などを舞台に、作品を通じて下呂の自然や歴史、地域の暮らしをつなぎ、土地の新たな魅力を再発見してもらうことを狙う。
開幕式には江崎禎英岐阜県知事、山内登下呂市長、総合ディレクターの北川フラムさん、台北駐日経済文化代表処台湾文化センターの曽鈐竜(そけんりゅう)センター長らが出席。27人のアーティストも登壇した。
北川さんは長年、アートと地方創生の推進に取り組んでおり、近年は台湾文化センターとも協力。日本各地で開かれる芸術祭への台湾人現代アーティストの参加促進につなげている。
台湾文化センターの曽センター長は、芸術祭を通じてより多くの台湾人に下呂を訪問してもらい、温泉とともに芸術を楽しんでほしいと期待を寄せた。
涂さんの作品は、下呂温泉合掌村近くの空き地に設置された。長さ約14メートル、幅9メートル余りの大きさで、二つの顔と四つの手を持つ両面宿儺が、高沢山の「神竜」と戦い、やがて骨となり、後世になって化石として発掘されたという架空の物語をモチーフにしている。
中央社の取材に応じた涂さんは、現地の神話を調査し、それを本物の考古遺跡のように仕立てたと説明。この神話の証拠を作ったようなものだと語った。
また、両面宿儺は人気漫画「呪術廻戦」にも登場し、若者には一定の知名度があるとしつつも、自身が興味を持ったのは、漫画のキャラクターの背後に隠された、千年にわたって伝えられてきた飛騨の伝説だと強調。調査を重ね、両面宿儺と神竜の対決を作品のテーマに決めたと語った。
両面宿儺は神像が残る寺を訪問してデザインを決めた。一方の神竜は北海道で化石が発掘された「カムイサウルス」を参考にしたという。どちらにも現実と虚構の要素があり、このことが人を引き付ける魅力だと話す。
制作には1カ月余りを費やした。下呂入り4日目には厳しい暑さの中長時間作業したため、熱中症になるトラブルにも見舞われたが、消防隊員や市議会議員、下呂市の田口広宣副市長らがボランティアとして加わり、完成にこぎ着けた。
突然の大雨で作品が約50センチの深さの水に浸かる被害にも遭ったものの、夜を徹して排水設備を設置し、開幕に間に合わせた。
芸術祭は11月8日までの開催だが、下呂市は涂さんの作品を半永久的に残す意向を示しているという。
作品について、台湾のチームから現地のスタッフ、地域の人々まで多くの人が共同で完成させたと涂さん。「下呂市の人々と一緒に作った作品だ」とアピールしている。
