東京都墨田区と南部・台南市の企業による「共創」の成果を紹介するイベントが今月上旬、台南市で、墨田区の企業との連携に関心を持つ現地企業の関係者などを集めて開かれた。参加者は墨田と台南の企業のコラボレーションによる軽食やスイーツを味わいながら、今後の協力の可能性について意見を交わした。墨田区は行政同士の連携にも期待を寄せている。
伝統の技を継承する職人が今でも多く活躍し、「ものづくりのまち」として知られる墨田区。地域ブランド認証制度「すみだモダン」を推進し、産業だけではなく、地域そのものの魅力を育てる取り組みを行っている。一方、歴史や文化が息づく台南市も、独自の文化や産業を世界へ発信し、都市の魅力向上を図っている。
墨田区は2015年、台湾デザインセンター(現台湾デザイン研究院)と2者間の覚書を締結したのをきっかけに、台湾のデザイナーと墨田区企業による新商品の開発を行ってきた。新型コロナウイルスの流行により、協力事業は一時は途絶えたが、昨年復活。以前の「台湾側でデザイン、墨田区側で製造」という形から、双方で意見を出し合いながら共同でものづくりを行う「共創」へと軸足を移し、新たな可能性を探っている。昨年12月に東京スカイツリーで開かれた魅力発信イベント「Meet Sumida」には、墨田区の声掛けにより北部・新竹県や台南市の企業も参加し、墨田と台湾の企業同士の交流が生まれた。
交流会では、墨田区に工房を構える「玻璃匠山田硝子」が台南のビストロ「酣呷餐酒」とコラボした「花切子」グラスで、オリジナルカクテルが振る舞われた。グラスには酣呷のバーテンダーによるアイデアで、目盛りの役割を果たす葉の模様があしらわれた。
また、墨田区のチョコレート専門店「ショコラティエ川路」と台南の漢方スイーツ店「漢菓方」(ハングォファン)によるスイーツも登場した。漢菓方のCEO、スティーブ(黄柏鈞)さんによれば、ショコラティエ川路とは「Meet Sumida」をきっかけに意気投合。すでにコラボレーションショコラを開発し、販売を開始した他、川路側からの提案で今後新たなコラボ商品も登場する予定だという。
墨田区は「すみだモダン」のPRのため、台湾の自治体との行政間の連携に意欲を示す。墨田区産業観光部産業振興課の石岡克己課長は、今回の訪台の目標の一つは、北部・新竹県政府や台南市政府、台北市文化基金会を訪問し、連携の機会を探ることだと話す。「すみだモダン」の取り組みを台湾の自治体にも知ってもらうことで、行政同士での協力関係を構築し、ウィンウィン(相互利益)の事業者支援につなげたい考えを示した。
また、台湾との連携を進める背景について、台湾の消費者は日本のものづくりや商品への関心が高く、「親和性がある」と説明。すみだモダンの販路拡大を考えた時に「『台湾からやろう』と考えた」と語った。
墨田区と台南市は2024年に山本亨墨田区長が黄偉哲(こういてつ)台南市長を訪問するなど、すでに交流がある。台南市の文化施設「藍晒図文創園区」では今月1日から台南と墨田の生活交流展「甜・慢熱」が開かれている。台南市政府文化局文創発展科の徐仙如科長は「今後墨田区とどのように連携していくか模索していく」と前向きな姿勢を示した。すでに墨田区の企業とのコラボに意欲を示している台南企業もあると明かした。
墨田区のガラス食器メーカー、廣田硝子の廣田達朗社長は、リサイクルガラスの分野での台湾企業との連携に期待を寄せる。同社は近年、リサイクルガラスを使ったジュエリーの製造に乗り出しており、廃棄ガラスの回収や再加工に長年取り組む「春池玻璃」(北部・新竹市)との連携に意欲を示した。
山田硝子の江戸切子職人、山田真照さんも今後の台湾企業とのコラボについて「機会があればやりたい」と積極的な姿勢を見せ、台湾の有名ブランドのお酒に合わせたグラスを製作するアイデアを披露した。
(名切千絵)




