(台北中央社)中華民国国慶日(国家の日)の10日、頼清徳(らいせいとく)総統は台北市の総統府前で開かれた祝賀式典で演説した。民主的な国政運営が生み出す成果によって、国民が強固な基盤の上で安心して暮らせる「山の上の町」を「勇気と自信を持って」築く意欲を示した。
頼総統は、台湾で総統直接選挙が実施されてから今年で30周年を迎えたことに触れ、投票を通じて、この国の主人は国民であり、台湾の未来は台湾の人々自身が決めるということを世界に告げたと強調。台湾は、民主化を成し遂げ、政権交代を経験し、数々の試練を乗り越えてきたと振り返り、台湾が民主主義をより深く根付かせ、世界へと歩みを進めれば進めるほど、さらなる繁栄を生み出し、世界に貢献する力もそれだけ大きくなると語った。
経済面では、今年上半期だけで経済成長率(速報値)は14.15%に達し、通年の成長率も11%を超え、39年ぶりの高水準になる見通しだと説明。1人当たりの国内総生産(GDP)も、2016年の約2倍に相当する4万5332米ドル(約717万円)に達する見込みだと紹介した。
外交面では、自身がエスワティニ(旧スワジランド)を公式訪問した他、蕭美琴(しょうびきん)副総統がパラオを訪問して成果を上げたのに加え、招待を受けてイタリアで開催された「ベントテーネ欧州自由・民主主義フォーラム」で台湾の声を届けたと強調。また、スイスの国際経営開発研究所が発表した世界競争力ランキングでは過去最高の総合4位に躍進したとし、「これらの成果は間違いなく2300万の台湾の人々の誇り」だと述べた。
今後の台湾の在り方については、「台湾の土台は国民の暮らし」だとした上で、賃上げ、減税、福祉の充実、負担軽減を進め、国民一人一人がしっかりと足元を固め、より良い生活を送れるよう取り組むとし、少子化や超高齢社会、住宅問題、人手・人材不足、詐欺、違法薬物と薬物運転、エネルギーと気候変動の課題に対応する施策を推進するとした。
中国との関係では、中国が軍事的圧力やグレーゾーンでの活動を続け、台湾海峡の現状を変更しようとしていると指摘。国防改革を継続し、非対称戦力を強化するとともに、自主的な防衛産業の発展に取り組んでいると説明。半導体や情報通信、精密製造など台湾の強みを生かして自主的な防衛産業を発展させるとした。
さらに、「社会全体の防衛強靱(きょうじん)性」の構築を通じ、中央政府、地方自治体、民間の力を統合し、エネルギー、通信、交通、金融、食料、医療が継続的に維持する能力を高めるとした。
その上で、防衛への投資を拡大するのは、挑発のためではなく、戦争を抑止するためだとし、自国の防衛力を強化するのは、対話を放棄するのではなく、対等かつ尊厳ある形で対話を行えるようにするためだと力説した。
米国と中国が対話を通じて競争を管理し、衝突や戦争のリスクを低減していくことを歓迎する一方、台湾は権威主義が民主主義を侵食することや、恐怖が自由に取って代わることを許さず、揺るぎない責任ある行動をもって、台湾海峡とインド太平洋における平和と安定の現状を守り抜く決意を示すと述べた。
今後の産業政策では、半導体や人工知能(AI)、防衛産業、セキュリティー、次世代通信からなる「五大信頼産業」、シリコンフォトニクス、量子コンピューティング、ロボティクスの核心技術、重要鉱物、バイオ医療、アジア資産運用センター、公共インフラと都市再生、文化・クリエーティブ産業、観光産業などの重点産業を含む13の核心戦略産業の推進を、行政院(内閣)が加速させていると説明。台湾の次世代における競争の優位性を確保するとした。中小・零細企業への融資や人材育成、デジタルトランスフォーメーション(DX)、ネットゼロへの移行、海外販路の開拓も支援し、従来型産業の成長も後押しするとした。
国民生活については、11年連続で最低賃金を引き上げることに触れ、賃上げを促す施策と社会的支援を通じて、経済成長をより良い待遇とより軽い負担へとつなげていくとした。
さらに、台湾がアジアで初めて同性婚を合法化したことに言及。誰もが排除されることなく尊厳を持って暮らし、自由に幸福を追求できる社会を実現するとした。医療や農業、エネルギー、科学技術、教育、持続可能な発展などの分野での国際協力も進め、助けを必要とするより多くの人々に、温もりと希望を感じてもらいたいと語った。
頼総統は、人々の力を一つにし、国を前へと導くことが総統の責任だとし、着実な国政運営で「山の上の町」を築き、揺るぎない民主主義と防衛の力で平和を守る「塩」となり、イノベーション、平等、善意で、世界を温かく照らし、世界に希望をもたらす「光」になると決意を示した。
(編集:齊藤啓介)