(台北、台南中央社)米半導体大手エヌビディアが拠点の設置を希望している台北市のテクノロジーパーク「北投士林科技園区」のT17、T18区画で16日、地上権を所有する保険大手、新光人寿が開発プロジェクトの起工・地鎮祭を開いた。同区画を巡っては、エヌビディアを誘致したい土地所有者の台北市政府と新光人寿の間で交渉が難航しており、市はエヌビディアが土地を取得できるよう全力で支援する方針を示している。
北投士林科技園区は市が開発を進めるエリア。周辺には大病院や医療系の研究機関などが密集していることから、市は同エリアを情報通信技術を活用したヘルスケア「eヘルス」や科学技術、スマート産業の集積地とすることを目指している。だが、T17、T18区画については2度の入札不調を背景に、市が条件を緩和し、新光人寿が2021年に両区間の土地計3.89ヘクタールの50年間の地上権を計44億台湾元(約180億円)で取得していた。これまで同社は実際の開発には着手していなかった。
エヌビディアのジェンスン・フアン(黄仁勲)最高経営責任者(CEO)は5月、同社の台湾本社を台北市の北投・士林一帯に設置すると発表。具体的な場所には言及していなかったが、蒋万安(しょうばんあん)台北市長は6月、同社から設置先について「T17、T18区画」と明言されたと明らかにした。
新光人寿は7月、T17、T18区画の地上権をエヌビディアに移転したい意向を台北市に表明した。だが市は契約上、開発完了前の移転は認められないとして、新光人寿に契約解除を提案。新光人寿は契約解除については拒否した一方で、開発完了後の移転には同意したが、エヌビディアがこれに同意せず、交渉は膠着状態となっている。
蒋市長は16日、エヌビディアの第一希望であるT17、T18区画を同社が取得できるよう全力で支援する立場を示した。また、エヌビディアから台北市内の別の適地を探したいとの意向が正式に示されたとし、すでに具体的な案を同社に提示したと明かした。
新光人寿の持ち株会社「台新新光フィナンシャルホールディングス」(台新新光FH、台新新光金控)の林維俊総経理(社長)は同日、同社と台北市はパートナー関係にあり、エヌビディアを台湾に残したいとの立場は官民ともに一致していると強調。一方で、地上権契約が変更されるまでは、契約に基づいて行動するとの立場を示した。