台湾最大規模の音楽賞「ゴールデン・メロディー・アワード」(金曲奨)。国籍や地域の制限は設けず、台湾で初めてリリースされた作品を対象とし、台湾のみならず、香港や中国のアーティストからも応募が寄せられる。37回目を迎えた今年も、ベテランから新人まで、バラエティー豊かな作品がノミネートされた。6月27日に台北市の台北アリーナで開かれた授賞式の名場面を振り返る。
▽ 台湾の歌姫ジョリン・ツァイが年間アルバム賞&華語女性歌手賞
今回、最多8部門9ノミネートを果たし、最も注目を集めたのは、台湾の歌姫ジョリン・ツァイ(蔡依林)の「Pleasure」。7年ぶりにリリースしたオリジナルアルバムで、ジョリンが初めてプロデューサーを務めた意欲作だ。
「Pleasure」は年間アルバム賞の他、華語女性歌手賞、技術部門の歌唱レコーディングアルバム賞の3部門を受賞した。ジョリンの華語女性歌手賞受賞は2007年以来19年ぶり、2度目。年間アルバム賞は華語、台湾語、客家語、原住民語の言語別部門の作品賞にノミネートされた全ての作品の中から選ばれる賞で、「その年で非常に重要で時代的意義や先進性を持つ作品」(黄韻玲・審査員団主席)に贈られる。
台湾の女性歌手でトップレベルの人気を誇るジョリン。この日も台北アリーナには大勢のファンが詰めかけ、ひときわ大きな声援を浴びた。
華語女性歌手賞で名前が呼ばれると、ジョリンはステージに向かう途中で両手を高く掲げ、喜びを全身で表現した。
「このアルバムは歌手人生の中で最も重要なアルバム」だと声を詰まらせながら語り、「ここに来るまでにたくさんのノイズがあった。それでも、このノイズを絵筆に変えて、次の自分の景色を描き続けていく」と、絵画でも才能を発揮するジョリンならではの言葉でさらなる飛躍を誓った。
▽ チャン・チェンユエは華語アルバム賞&華語男性歌手賞 ジョリンと並び3冠
華語アルバム賞は、男性シンガーソングライターのチャン・チェンユエ(張震嶽)の12年ぶりのアルバム「跟著感覚走」が受賞。チェンユエの華語アルバム賞受賞は2014年以来となった。チェンユエは同作で華語男性歌手賞と作曲家賞(収録曲「浪人的…」)も受賞し、ジョリンと並んで今回最多の3冠に輝いた。チェンユエの華語男性歌手賞受賞は、デビュー33年にして初めて。
チェンユエは受賞スピーチで「皆さんありがとう。最高!」とありのままの感情を表現。「優しい心で世界と向き合うことは、私にとって名を成すことよりもさらに重要。より善良な心でこれからも作品をつくっていく」と語った。
▽ 大ヒット映画の主題歌が年間歌曲賞に
その年を代表する、独自性を持つ楽曲に与えられる「年間歌曲賞」には、今年大ヒットした台湾映画「陽光女子合唱団」の主題歌で、アリン(A-Lin)が歌う「幸福在歌唱」が選ばれた。
「陽光女子合唱団」は昨年末に公開され、台湾映画として歴代1位の興行収入を記録した 。
同曲のプロデューサーを務めたチェン・ジェンチー(陳建騏)は「この曲の大きな意義は、楽曲が人々に温もりを与え、観客がその幸せな感覚を持ち帰ったことだ」と話した。
▽ 女性アイドルグループ「GENBLUE」がボーカルグループ賞
ボーカルグループ賞には女性アイドルグループ「ジェンブルー」(GENBLUE幻藍小熊)が韓国語ミニアルバム「MIRROR」で選ばれた。女性アイドルグループとして2003年の「S.H.E」以来23年ぶりの同賞受賞という快挙を成し遂げた。
ジェンブルーは2023年に台湾で結成。24年に韓国でデビューを果たした。現在は韓国人メンバー1人を含む6人で活動する。
メンバーのXXINは受賞スピーチで「今の新しいアイドルはとても優秀。認められる力を持っている」と力強く訴えた。プレスルームでNicoは「人生で初めて『本当に信じられなくて震える』という感覚を味わった」と興奮冷めない様子で語った。
▽ 新人賞は異彩を放つ女性ラップ歌手・チェン・シェンチンが受賞
新人賞は、女性ラップ歌手のチェン・シェンチン(陳嫺静)が「如果每天都可以 happy happy 誰想要sad:*- 合作的秘密」で受賞した。27歳のシェンチンは2018年からYouTubeで作品の発表を開始し、昨年、初アルバム「如果每天都可以 happy happy 誰想要sad」をアナログレコードとCDでリリース。受賞作の「合作的秘密」はCD版で、さまざまなスタイルの編曲家やプロデューサーとコラボレーションした。レッドカーペットに登場した時から、異彩を放っていたシェンチン。受賞後のパフォーマンスでは独自性にあふれた軽やかな歌声を披露し、人々に存在感を植え付けた。
▽ 台湾語女性歌手賞受賞のPiAは日本語でスピーチ
台湾語女性歌手賞には、シンガーソングライターのPiA(呉蓓雅、ウー・ペイヤー)が「離婚初体験」で選ばれた。近年、日本でも積極的に音楽活動を行っているPiA。受賞スピーチでは流ちょうな日本語も披露し、日本のスタッフや応援してくれているファンに感謝した。
▽ 日本から羊文学が出演 「呪術廻戦」エンディング曲で盛り上げる
授賞式には日本から、ロックバンドの羊文学が国際パフォーマンスゲストとして出演した。台湾でもよく知られるテレビアニメ「呪術廻戦」のエンディングテーマ「more than words」を披露し、式典を盛り上げた。
イントロが流れると、プレスルームでも「わ~」と歓声が起こり、同曲の台湾での認知度の高さを感じさせた。
ボーカル・ギターの塩塚モエカはパフォーマンス後、「伝統のある賞だと思うので、演奏させていただけてとても光栄」と語った。また、滞在中にはナイトマーケットやマッサージに行きたいと目を輝かせた。
▽ A-Linが初司会 ちゃめっ気あるやりとりで笑い誘う
授賞式の司会には、歌手のアリン(A-Lin)が初挑戦した。オープニングでは「幸福在歌唱」を弦楽の生演奏をバックにしっとりと歌い上げた後、ジョリンの「Pleasure」を豪華セットでダンサブルに歌うなどし、会場のボルテージを一気に高めた。司会でも、持ち前の明るさとユーモアを存分に発揮し、ノミネートされたアーティストとコミカルなやりとりを繰り広げるなどして式典に笑いを添えた。
▽ カレン・モクやヒビら豪華アーティストがパフォーマンス
今年の授賞式も、豪華アーティストがパフォーマンスを披露した。ロックバンド「TRASH」と台湾初の客家語パンクバンド「粹垢 TRAEGO」のコラボレーションでは、両バンドが力強いパフォーマンスを披露し、会場を熱気に包んだ。
この1年間にこの世を去った音楽人を追悼するパートには、女性歌手のヒビ(Hebe、田馥甄)が登場。今年2月に亡くなった恩師で有名音楽家のユエン・ウェイレン(袁惟仁)さんが手掛けた名曲「離開我」などをメドレーで歌い上げ、しっとりとした歌声で感動を呼んだ。
「音楽界のレジェンド」の異名を持つ74歳の女性歌手ビリー(比莉)は、息子でシンガーソングライターのニック・チョウ(周湯豪)と親子でコラボレーション。年齢を感じさせないエネルギッシュなパフォーマンスで人々に元気を与えた。
パフォーマンスの最後を飾ったのは、俳優で歌手のカレン・モク(莫文蔚)。バンド「The Masters」と管弦楽団を従え、「如果沒有你」や「愛」などの代表曲5曲を披露した。厚みのある歌声で観客や視聴者の心を揺さぶった。
(名切千絵)

















