戒厳令下(1949~87年)の台湾で当時の国民党政府が市民の思想や言論を弾圧した「白色テロ」を紹介する北部・新北市の国家人権博物館・白色テロ景美記念園区で、今月から新たな特別展が始まった。反政府的な意見を発表するなどした人の入出境を禁じていた、いわゆる「ブラックリスト」に焦点を当て、中華民国憲法で保障されている“人身の自由”が侵害されていた歴史を伝える。
同館はブラックリストについて、政府にとって不利な言論を発表した人や、反政府的な活動に参加した人だけでなく、関連の刊行物を読んだだけの人も対象となっていたと説明。特に海外にいた台湾人が対象となり、台湾への入境が制限されていたという。ブラックリストに載った多くの人々が帰郷運動を起こし、努力して人身の自由の権利を取り返したことが、台湾のブラックリストの時代を過去のものにしたと紹介している。
同館によれば特別展では、台湾の独立を訴える「台湾自救宣言」を発表して64年に逮捕された社会運動家の故・彭明敏(ほうめいびん)氏が、釈放後の台湾脱出時に使用した変装用のかつらや義足、眼鏡などの歴史的資料を展示している。また、来場者が入口で人物に関するカードを引き、『身分確認窓口』を通過してから入場する仕組みを採用するなど、没入体験の手法が取り入れられた。
特別展のキュレーターを務める政治大学の薛化元(せつかげん)教授は12日に行われた記者会見で、ブラックリストが存在し運用されていた事実は、台湾の歴史上でとても重要な人権課題の一つだと語る。展示を通じて、過去の人々の努力を記憶にとどめ、今日の台湾の民主主義と自由がどれだけ得難く貴いものか知ってもらいたいと話した。
園区への入園と特別展の観覧は無料。毎週月曜を除く午前9時から午後5時まで。来年10月12日まで。