(台北中央社)中国の海洋政策に詳しい九州大学比較社会文化研究院の益尾知佐子教授は14日、台北市内で中央社の取材に応じ、中国が海洋活動の強化を図る台湾東部海域について、「台湾と日本、さらにはフィリピンの共通利益」だとし、それぞれの権益を維持するために、エビデンス(証拠)を持ち寄り、中国の意図を分析する必要があるとの認識を示した。
益尾教授は台湾と日本の関係について、実際には強い協力関係はないと指摘。さらに、日本では台湾有事への関心が薄れがちで、武力侵攻は起きないといった楽観的な雰囲気があり、最近には中国軍制服組トップの党籍が剥奪されたことで、有事はないとする見方が広がっている他、高市政権の海洋問題への関心も下がっていると語る。
だが、台湾東部海域で中国が行っている法執行パトロールの活動は今後より充実することはあっても「絶対になくならない」と強調。また、同海域は日本とフィリピンの排他的経済水域(EEZ)が重複していることに触れ、日本の利益に直結しているとその重要性を力説した。
また、台日間では民衆同士が互いに対して好感を持っているが、「意外と相手のことは分かっていない」、「お互いに分かっているつもりだけれど、一番重要なことは全く意見交換をしていなかった」とし、さらなる相互理解の深化が必要だとの認識を示した。
中国の習近平国家主席については、一番重要としているのは国内政治とした上で、それと同時に達成したいミッションは国際政治秩序の再建と台湾統一だと説明。武力統一については「決定路線ではないが、絶対に捨てる路線でもない」とし、有事に至らないグレーゾーン戦略と「今後も併用すると思う」と語った。
グレーゾーン戦略については「方法論はより充実してきている」と強調。習氏は中国共産党総書記や国家主席になってからさまざまな改革に着手し、使える手段は増えてきていると語る。海洋政策面では漁業改革や築港、海洋の環境保護などに取り組んだだけでなく、中国の漁業従事者を民兵として動員していくような体制を作ってきていると話す。
また、科学技術力の向上や社会主義体制の再構築などを通じ、中国が新たに味方として獲得している国際的なパートナーや、国内で新たなミッションを意識して動けるような人たちも増えてきているとした上で、習氏にとっての手段が増加し、最近にはそれをグレーゾーン戦略に投入できるようになったと説明。習氏はそれをより使いたいというインセンティブ(動機)が高まっていることから、新しい動きが顕著になっていると思うと述べた。
さらに、中国は、米国中心の国際システムを打破して、アジアに中国中心の別の地域システムを作りたがっていると主張。最近の中国の太平洋での行動を見ていると、太平洋の西半分を自らの覇権の下に置きたいと考えており、それを実現するためには「最悪米国と武力衝突が起きても大丈夫なように準備している」とした上で、「台湾問題は独立した事項ではなく、将来的に米中開戦の大きなきっかけになる可能性はあると思ってみている」とした。
台湾有事が発生した場合については、自衛隊は日本の国内法上、台湾を直接助けることは難しいとしつつも、「日米同盟が機能し続けることが実際は台湾にとっても非常に重要だ」と語った。
(齊藤啓介)