(台北、ベルリン中央社)小説「台湾漫遊録」(日本語版=台湾漫遊鉄道のふたり)の著者、楊双子(ようふたご)さんがドイツ・ミュンヘンで座談会を行った際、通訳者が参加者の発言を正確に訳さなかったことが議論を呼んでいる。中国が座談会の開催を阻止しようとしたとの情報もある。
原書を出版した春山出版のフェイスブックによると、座談会は文学センター「リテラトゥアハウス・ミュンヘン」で1日に行われ、300人収容の会場は満席となった。
同社の荘瑞琳編集長は中央社の取材に対し、台湾に対する中国の脅威について楊さんが話した際、通訳者に内容をそのまま訳せないなどのミスが度々あったと説明。司会者とドイツ語版の翻訳者がドイツ語で交わした会話を登壇者に伝えず、「中国」「中華民国」などの言葉も訳されなかったと話した。
また、中国の駐ミュンヘン領事館がリテラトゥアハウス・ミュンヘンに対して座談会の中止を求めたものの、会場がそれを拒んだという情報も、終了後に伝わってきたと明かした。
座談会はドイツ各地を巡回して開催しているもので、荘氏によれば、春山出版は当初、ドイツ在住の台湾人ジャーナリスト、林育立さんを通訳として起用するよう要請していた。だがミュンヘンではビール祭り「オクトーバーフェスト」が開催されており宿泊費が高騰していたことから、主催者が現地の通訳者に依頼した。
通訳を巡る騒ぎを受け、主催者側からは謝罪があり、ドイツの出版社やリテラトゥアハウス・ミュンヘンからは今後、問題になった通訳者を起用しないとの説明があった。また、4日にベルリンで行われた座談会では林さんが起用され、今後他の都市で予定されている座談会でも林さんが通訳を務めるという。
楊さんは中央社の電話取材に応じ、座談会は「翻訳と愛」がテーマで、「文学は政治と切り離せない」ことや、台湾が植民地の歴史に向き合う際の「植民地化を拒む」立場など、多くの内容を語りたかったが、通訳の問題でうまく伝えることができなかったと振り返った。
台湾漫遊録は、英訳版「Taiwan Travelogue」が今年5月、英国の文学賞「国際ブッカー賞」を受賞した。
