(台北、台中中央社)産経新聞の前台北支局長で、台湾を拠点に活動するジャーナリストの矢板明夫さんが6日、中部・台中市で男に顔を殴られた事件について、外交部(外務省)は同日、男が「中国籍の香港人」だとした上で、中国が世界各地で各国の人々に対して越境弾圧を行い、暴力で権威主義の影響力拡大を企てている実態を浮き彫りにしたと指摘し「厳正な非難」を表明した。
警察などによると、矢板さんは台中市内のホテルで開かれたイベントでの講演を終え、正午ごろにホテルを離れる際に男に殴られた。男は逃走したが、午後4時ごろ、台中国際空港で韓国・釜山行きの便に搭乗する15分前に逮捕された。犯行時には黒い服を着用していたが、逮捕時は白い服に着替えていた。
容疑者は33歳で、警察は「中国籍で、香港のパスポートで訪台した」と説明している。
外交部は6日夜、報道資料を通じ、中国で1日に「民族団結進歩促進法」が施行された後に初めて起きた越境弾圧の暴力事件だとの見方を示した上で、国際社会に対し、中国による越境弾圧に対して共に抵抗し、中国の悪法や暴力がもたらす影響を正視するよう呼びかけた。
内政部警政署(警察庁)は同日夜、逮捕した容疑者の男が越境弾圧に関与したかどうかを引き続き調べるとともに、台湾側の協力者についても捜査を行っていると発表した。
また台湾は民主主義の法治国家であり、国民の身体の安全と言論の自由はいずれも法律で保障されていると強調。暴力や脅迫などの違法な手段で公共の秩序を乱し、国民の権利・利益を侵害するいかなる行為についても、警察は法に基づいて捜査し、厳しく責任を追及するとした。併せて国民に対し、域外敵対勢力の「現地協力者」にならないよう注意を促した。
▽ 矢板さん、自身の状況を報告 計画的な犯行と指摘
矢板さんは7日、自身のフェイスブックページを更新した。自身の状況について、大きなけがはなく、唇の傷も回復してきているものの、前歯がぐらついており食事の際には痛むため、流動性のあるものしか食べられないとつづった。
容疑者がホテル内のカフェで2日間近く待機していたことや、犯行後すぐに現場を離れ、途中で着替えた上で空港へ向かい、航空券を購入して出国を図ったことなどを挙げ、突発的な犯行ではなく、周到に準備されたものだったとの見方を示した。
その上で、いかなる暴力や威嚇にも屈せず、今後も台湾の自由や民主主義のために声を上げ、台日友好を推進していくとした。