(台北中央社)白色テロ時代の1960年代に台北で発生したバラバラ殺人事件を題材にした映画「捜査瑠公圳」(Where the River Flows)が5月16日に台湾で公開される。同名漫画下巻の発表と映画の座談会が5日、台北国際ブックフェア(台北国際書展)で開かれ、ライ・チュンユー(頼俊羽)監督らが作品について語った。
同作は戒厳令下の1961年、刑事と記者が台北市内を流れる水路付近で女性の切断遺体を発見し、コンビを組んで真相の究明に挑むという物語を描く。実際に起きた事件を基にした。刑事役をベラント・チュウ(朱軒洋)、記者役をジュリア・ウー(呉卓源)が演じる。
ライ監督は、最も難しかったのは実地調査によって1960年代の雰囲気を再現することだったと明かす。また、刑事と記者のコンビで事件を調査するという設定を採用したことに触れ、「英国にはシャーロック・ホームズ、日本には(名探偵)コナンがある。でも台湾には同様のIP(知的財産)がない。このようなコンビの形で事件全体を浮き彫りにしたかった」と話した。
また、当時の国民党政権下で市民の思想や言論が弾圧された白色テロについて、過去に白色テロを扱った作品のクリエーターはもしかしたら悲観的な立場を取っていたのかもしれないとした上で、今作ではより商業的な言語でこの重い歴史を伝えたかったと言及。このような形の方が、理屈的だと思わず、よりしっかりと吸収でき、そして深く知ろうと思えるのではないかと語った。
ライ監督によると、漫画版は映画より先に制作に着手していたという。映画は取捨選択がなされているため、完全なオリジナルの精神と要素は漫画の中で表現されていると紹介した。
座談会には李遠(りえん)文化部長(文化相)も駆け付けた。映画版の製作には10年近くが費やされたとし、「台湾の若い映画監督が途中で諦めることなく、新たなジャンルの作品を開発していることにずっと感動している」とたたえた。