(台北中央社)日本統治下の台湾で昆虫や民族学の研究に励んだ日本の博物学者、鹿野忠雄の足跡をたどる書籍が昨年末、台湾で刊行された。同書を執筆した生態作家の劉克襄さんは7日、台北市内で開催中の台北国際ブックフェア(台北国際書展)に出席し、書籍出版への思いを語った。
書籍のタイトルは「流火:鹿野忠雄的台湾養成」。1980年代から40年にわたり、台湾と日本を何度も行き来しながら鹿野の足跡を追いかけた。劉さんは、この本を書かなければ人生で悔いが残ると感じ、「必ず書かないといけない」との思いで書き上げたという。
書籍によると、鹿野は1925年に訪台し、台湾総督府高等学校(後の台北高等学校、現在の台湾師範大学)に入学。台湾で登山に魅了され、台湾原住民(先住民)族集落にも足を運んだ。
劉さんは、先住民セデック族による抗日蜂起「霧社事件」(1930年)が起きる数年前、鹿野が事件の舞台となった霧社集落にある程度長い期間滞在し、同事件をテーマにした台湾映画「セデック・バレ」で事件の主要人物として描かれた頭目のモーナ・ルダオやセデック族出身の警察官、花岡一郎らとも知り合ったと紹介。鹿野が事件後に集落を再訪したかは今となっては確かめられないものの、鹿野にとっては心の傷になったことだろうと話した。
また、鹿野の足跡をたどる過程で、台日のエリートと台湾の結び付きに関する一連の物語を知ったとし、鹿野を通じて一時代全体の台湾史も発見したと語った。