文化+/まるでワイン農園のようなグアバ畑 屏東の農家、ブランド化に力<文化+>

2022/06/10 18:19

ローカルであればあるほど、国際化するー。

近年、故郷に戻る若者が増えている。稲作あるいはコーヒー豆栽培への従事であれ、伝統産業の革新・再生に向けた活動であれ、故郷に戻る理由は、地元への思いだけではない。どんなライフスタイルを送るのかという選択でもある。自身が外で学んだことや創意によって、故郷の土地で果実を進化させ、新たな風を吹き込んでいる。

旧暦3月、午後3時。南部・屏東県潮州には相変わらず灼熱の太陽が降り注ぐ。小型車でさえもUターンできないような細い田んぼ道の右側には、さまざまなソーラーパネルが設置され、台湾南部の太陽光を集めてグリーンエネルギーに変えている。道の左側の畑には、背の低い木が整然と並ぶ。乾いた土にたまに吹く爽やかな風は、米カリフォルニアのワイン農園をほうふつとさせる。ただ、その手にあるのはワイングラスではなく、口当たりが滑らかで、酸味と甘みを感じるグアバだ。

※本記事は中央社の隔週連載「文化+」の「那片像葡萄園酒莊的芭樂田」を編集翻訳したものです。

▽ 父親が育てた果実でブランドを築く

親子3代で耕してきたこの畑では、これまでパパイヤやレンブ、小ぶりなマンゴー(土芒果)、バナナなどさまざまな果物を栽培してきた。父親の潘連進さんと息子の潘彦升さんが現在、力を入れているのはマンゴーとグアバだ。2019年に「挽菓子」(Regetseed)というブランドを立ち上げ、PRと販売拡大を進めている。今では毎年、生産量の9割を海外に輸出し、台湾では1割を贈答用として販売。注文は途切れることがない。

潘さん一家の農園(台湾好基金会提供)
潘さん一家の農園(台湾好基金会提供)

ブランドの管理や対外販売、マーケティング、外部との連絡などを担当する息子の彦升さんは、Uターン青年の実例だ。家族の中では勉強が比較的良くできたが、畑仕事は苦手だった彦升さんは、家族の期待を背負って故郷を離れ、台北の大学に進学した。両親も彦升さんにできるだけ遠くに羽ばたいてほしいと考えていた。だが、彦升さんは卒業後、故郷に戻ってきた。

「最初は帰ろうと思っていなかったんです」。彦升さんは私立大で中国語文学を専攻、政治を副専攻として学んだ。大学の合唱団にも参加し、歌うのが好きで、音楽ホールで音楽を聞くのが趣味だった。田舎の潮州に戻るということは、全ての趣味を捨てるということに等しい。だがある時、台北の百貨店のスーパーで父親が育てた果物を見かけたことが彦升さんの選択を変えた。

高級スーパーに並ぶ父親の果物には、生産者でさえも買えないような値段が付けられていた。「私はそこで固まってしまいました。父に入ってくるお金と、スーパーで売られている価格の間には6倍の差があったのです。しばらく理解が追い付きませんでした」。彦升さんは、実家ではエコで進化した方式で果物を栽培していることを知ってはいたが、中間のさまざまな手続きのせいで生産者が然るべき報酬を得ることができないと気付いたその時、実家の農業に対して新たな考えが生まれ始めた。

大学4年の前期、卒業後の進路を考え始めた彦升さんは家族と真剣にブランドづくりのアイデアを話し合い、「挽菓子」というブランド名を付けた。

「挽菓子」とは台湾語(閩南語)読みをすると、「果実を摘み取る」という意味になる。父親が真剣に働いている姿を思い出し、父親の物語を多くの人に伝えたいと彦升さんは考えた。「グアバであれ、マンゴーであれ、父と家族は一個一個、丁寧に選び、はさみでしっかりと摘み取っています。直接引っこ抜いたり、力任せに折ったりしないのです」。

(左から)三男の潘俊廷さん、父親の潘連進さん、祖母の潘張秀花さん、次男の潘上至さん、長男の潘彦升さん(台湾好基金会提供)
(左から)三男の潘俊廷さん、父親の潘連進さん、祖母の潘張秀花さん、次男の潘上至さん、長男の潘彦升さん(台湾好基金会提供)

▽ 果物店の絶好の位置を逆転させる

家族の同意を得て、彦升さんはブランドづくりに取り掛かった。「台湾は果物王国なのに、果物屋の一番いい場所に置かれているのは日本産のギフトセットだと気付きました。台湾の果物は新鮮で安くておいしいというだけにとどまっていたのです。台湾の果物によりよい質感を持たせ、栽培の過程もより環境に優しいものにしたいと考え、実家で栽培する果物から取り掛かることにしました」

2013年から、父親の連進さんは行政院(内閣)農業委員会高雄区農業改良場から技術移転を受けて「マンゴー高雄4号―蜜雪」の栽培を開始し、2018年には「グアバ高雄2号―珍翠」の栽培も始めた。どちらも見た目が美しく、人気を博している。

高雄区農業改良場が市場での潜在性を有する品種を開発するまでには少なくとも10年がかかる。潘さん一家は150万台湾元(約600万円)以上を投じて技術を買い切った。品種、品質、味わいの3つを兼ね備えた果物を生産するには「優良な種苗が7割、農家の努力が3割を占めます。2つが合わさってこそ、良い果実が生まれるのです」と彦升さんは語る。

▽ 環境に優しく ラン農家の「ごみ」を「肥料」に

潘さんの果実園では現在、「挿し木」と「接ぎ木」の2つの方法で育苗している。挿し木に使用する培養土には石灰石や雲母(うんも)といった天然鉱石が混合されており、多くを輸入に頼っている。彦升さんが実験したところ、天日干しをすれば繰り返し使用できることが分かった。そうすれば、廃棄物やカーボンフットプリントを大幅に減らすことができる。

接ぎ木に使う水草は、通常はラン農家に植え込み資材としてよく使われる。腐敗しにくく、良い物では2~3年使用できる。彦升さんは自分たちで購入する以外にも、近隣の複数のラン農家から廃棄されたランを譲り受けている。「ランを取り除いた水草の資材は、洗って処理すれば『ごみ』から『宝』へと生まれ変わります。誰かの廃棄物が私たちの肥料になるのです。経済的なだけでなく、原産国で採取される水草の量を減らすこともできます」

▽ 一家3代で耕す

18歳で潮州に嫁いだ1代目の張秀花さんが「挽菓子」の種をまいた。2代目の潘連進さんによる技術上の精進と研究を経て、2019年、3代目の彦升さんによって「挽菓子」のブランドが誕生した。代々の研究、改良で、「挽菓子」をさらに輝かせていく。

(趙静瑜/編集:名切千絵)

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