(台北中央社)野党・国民党の馬英九(ばえいきゅう)元総統は4日、半導体受託製造世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)が米国への追加投資を発表したことを受け、「重大な国家安全保障上の危機だ」との考えを表明した。与党・民進党は馬氏の発言に対し、「馬氏の目には中国しか映っていない。それこそが国家安全保障の危機だ」と批判した。
馬氏はフェイスブックでTSMCの米国投資に言及し、「人々は『護国神山』(TSMCの異名)がよそに行くのを心配している。これは重大な国家安全保障上の危機だ。人々の信頼や両岸(台湾と中国)関係、将来的な地政学上での台湾の地位にも重大なマイナスの影響が及ぶ」と指摘。頼清徳(らいせいとく)総統には「これらの問題を重視する姿勢が見られない」とし、それどころか、野党の立法委員(国会議員)のリコール(解職請求)運動に熱心に取り組んだり、蒋介石元総統を攻撃したりするなどして人々の感情を引き裂いていると非難した。
その上で頼総統に対し、「中華民国総統であるからには、中華民国憲法を誠実に守り、憲法によって課された中華民国総統の責任を負い、国家安全戦略上で重要な意味を持つTSMCを守り、内部を消耗させる大規模リコール運動をやめるべきだ」と呼びかけた。
これに対して民進党の広報担当、韓瑩氏は短文投稿アプリ「スレッズ」で、「TSMCや半導体産業を中国にプレゼントしようとしていたのは馬氏本人ではないのか」と反論。馬氏が総統を務めていた2015年に訪台した中国の半導体企業会長がTSMCを買収する意向を示した際、馬氏がこれを「経済攻勢だとは思わない」と述べ、両岸間の相互信頼を向上させるべきだと発言したことを紹介した。
韓氏は、頼総統が米国とのパートナー関係を強化し、世界の民主主義陣営による「非レッドサプライチェーン」を構築することでテクノロジー分野での優位性を引き続き保っていく姿勢を表明したことに触れ、「これこそが台湾が新局面に向き合う戦略目標だ」と強調した。