(台北中央社)10日の世界人権デーを前に、蔡英文(さいえいぶん)総統は9日、北部・新北市内の白色テロ景美記念園区で開かれた記念式典に出席し、政府が推進している移行期正義について、権利回復と賠償実施の他、歴史の真相をはっきりさせることの重要性を強調。そうしてこそ傷を癒やし許しを得て、台湾社会の団結と民主主義の発展を図れると述べた。
式典には国家人権委員会の陳菊(ちんきく)主任委員や史哲(してつ)文化部長(文化相)の他、白色テロの受難者やその家族ら約200人が参列。受難者代表の楊国宇さんは権威主義時代に自身が受けた迫害体験を振り返った。
蔡氏はあいさつで、楊さんをはじめ、人権を侵害された全ての人々に対し「心からの敬意」を表するとともに、総統就任7年来、政府が移行期正義を実現するため、系統的な作業に努めていると説明。今年は没収された財産や土地を受難者に返還することを目標に掲げているとした。
蔡氏によれば、関連業務を担当する権利回復基金会の調査を経て、4件の土地返還案が認められた。原物返還が原則だが、それが不可能な場合、金銭で損失を賠償するという。
賠償金の申請件数については1829件に上り、支払いが認められた賠償金の総額が30億台湾元(約138億円)を超えている。