昨年10月にポーランドで行われたショパン国際ピアノコンクールで優勝したエリック・ルー(陸逸軒)さん。同12月には台北と父の故郷でもある南部・高雄でコンサートに出演した。このほど、中央社の単独インタビューに応じ、クラシック音楽で現代のスピーディーな世界に対抗したいとの考えを語った。
インターネットが普及し、再生時間が短い「ショート動画」でのマーケティングが主流となっている現代は、聴衆の集中力が続く時間も短くなっていると指摘するルーさん。「クラシック音楽の動画も短くなってきています。小さい頃からクラシックに引き付けられてきた身として、偉大な作曲家たちの作品を丁寧に演奏し、多くの人に聴いてもらいたいと考えています」と話す。
ショパンコンクールには2015年、17歳の頃にも参加。この年は4位入賞を果たした。2度目の挑戦には、9割の人には反対されたものの「5%でさえ可能性があれば挑戦してみたかったのです」。美しい音楽を届けたいのに、そもそも聴いてもらえる機会がなければ意味がないと考え、入賞を逃した際のリスクやプレッシャーをも背負って出場を決めた。
「1次予選の時は毎日頭の中が音楽でいっぱいでした。どこをどう弾こうかなどと考えていて、ほとんど笑えない状態でした」と振り返る。緊張から食事に出かけることもできず、両親が買ってきたものを食べていた上に、体調を崩したこともあったと明かした。
受賞後、生活は一変した。2026年の演奏予定はすでにいっぱいで、27年の調整も進んでいる。ショパンの他、シューベルトやブラームスにも取り組む予定だ。
クラシック音楽は「人類文明の中で最高峰の芸術の一つ」だとするルーさん。感情、理性、心理から感覚的な美、イメージ、想像力に至るまで、全てを融合しているのだという。
幼い頃から音楽そのものの美しさに心を打たれてきたのであり、刺激的・表面的なものに引かれてきたのではないと語る。「6歳ぐらいのころにある交響曲を聴き、曲の構造や思想が、心から作り出された音のようだと感じたんです。自然と引き込まれていきました」。年を重ね、これらの音楽が偉大なのは刺激的だからではなく、時間をかけて聴き、経験する必要があるからだと理解するようになった。
長い曲も「必ず最初から最後まで通して聴く必要があります」とし、そうして初めて、長さの必要性がわかるのだと訴える。
また、「コンサートで自分がすべきことを発揮し、聴衆の一部でもそれを聴き取り、感じ取り、私が表現したい内容を理解してくれたら、とても幸せです」とした上で、「本当の天才は作曲家であり、私たち演奏家は、その天才たちが生み出した音楽に仕えているにすぎないのですから」と語った。
今でも舞台に上がるたびに緊張し、鼓動が高まる。「プレッシャーはさまざまです。他の人から悪く言われていたら、疑問を呈されていたら、否定されていたら…」。面の皮の厚さや揺るぎない自信、慎み深さが必要で、さらには自身が誰なのか、何を欲しているのかを知らなければならず、立ち止まることもできないのだと述べた。
コンクールでの優勝後、世界各地で30回以上の公演を重ねてきたが、台北での公演で一段落。ようやく訪れた数週間の休暇は、過ごしやすい気候で友人が多く、食べ物もおいしい台湾で過ごすと話した。
(台湾での年越しの様子を投稿したエリックさんのインスタグラム)
