(台北中央社)9日午前、小型船を操縦し、北部・新北市の河口に進入した中国人の男1人が海洋委員会海巡署(海上保安庁に相当)に逮捕された。同署によると、男は60歳前後とみられ、中華民国(台湾)に亡命すると供述しているという。顧立雄(こりつゆう)国防部長(国防相)は11日、現在も詳細を調査中だとした上で、敵が武力攻撃と判断しにくい手法で圧力を加える「グレーゾーン作戦」の可能性を排除できないとの見方を示した。
▽逮捕の男、通信アプリで中国政府を批判か
海巡署第3巡防区指揮部によれば、9日午前9時過ぎ、新北市淡水沖約6カイリ(約11キロ)に不審な船1隻があるのを発見。関係機関に通報し、監視を行ったという。船はその後、近くの淡水河河口に進入した際、民間の船と接触し、現場に駆け付けた同署の職員が操縦していた男を逮捕した。
男は調べに対し、通信アプリで中国政府を批判する言論をし、迫害されるのを恐れたため、台湾から200キロ以上離れた中国福建省の漁港から台湾へ進入したなどと供述しているという。
▽国防相「今回の経験をくみ取り、精進する」
淡水河河口は近年実施された国軍の演習で重要地点とされ、中国の小型船が進入したことについて各方面から批判の声が上がっている。海洋委員会の管碧玲(かんへきれい)主任委員(大臣)は11日の立法院院会(国会本会議)で、レーダーの監視担当者が小型船を港に戻る台湾の漁船だと誤認したと説明。「とても遺憾だ」と語った。
顧国防部長は同日、報道陣の取材に対し、国防部(国防省)は今回の経験をくみ取り、検討や精進をすると述べた。また卓栄泰(たくえいたい)行政院長(首相)も、警備体制などを強化するよう関係機関に求めたと強調した。
▽中国人の台湾への不法進入、直近11年間で121人
海巡署の統計によると、台湾に不法進入した中国人は、2014年から23年まで119人おり、今年は2人だという。
政府系シンクタンク、国防安全研究院国防戦略・資源研究所の蘇紫雲所長は、淡水河は政府機関のある台北市に通じていることから、関係機関は必ず警戒を高めなければならないと指摘。淡江大学(新北市)国際事務・戦略研究所の林穎佑助理教授(助教)は、中国側は間接的に台湾の防衛上の抜け穴を探っているとの見方を示し、中国福建省に近い離島の金門では中国のドローンが飛来していることに触れ、政府の関係機関は注意を払うべきだと語った。