文化+/<文化+>“異端版”台北女子図鑑 一人一人に枠にはまらない価値がある/台湾

2023/01/11 18:30:48
書籍「台女Tai-Niu:最辺縁的台北女子図鑑」を手掛けたファッション雑誌編集者の李昭融さん(右)とカメラマンのManbo Key(登曼波)さん(攝影:裴禛)
書籍「台女Tai-Niu:最辺縁的台北女子図鑑」を手掛けたファッション雑誌編集者の李昭融さん(右)とカメラマンのManbo Key(登曼波)さん(攝影:裴禛)

「台北女子図鑑」と言えば、話題のドラマを思い浮かべる人が多いかもしれない。だが、“異端版”の台北女子図鑑はご存知だろうか。

ドラマが配信される前から、台湾には実は「台北女子」を静かに観察し始めている人がいた。それは雑誌のコラムから始まり、一冊の書籍にまでなった。そして、近年侮蔑的な意味を含んで使われる「台女」(台湾女子の略)という単語を、さまざまな世代の台北女子20人の物語を通じて覆そうとしている。

書籍「台女Tai-Niu:最辺縁的台北女子図鑑」を手掛けたのは、ファッション雑誌編集者の李昭融さんとカメラマンのManbo Key(登曼波)さん、林建文さんの3人だ。李さんは雑誌で「台北女孩」(台北ガール)のコラムを担当し、女性の外見を彩るファッションや着こなしをつづった。だが、最も興味を抱いていたのは、彼女たちの美しい外見の内側にある物語だった。Manboさんと林さんは共に「クィア」(性的少数者)だ。彼らは自分たちをマジョリティーの外の「異端者」だと呼ぶ。彼らが見つめるのはもちろん、社会の枠にはまらない個性的な台北女子だ。

「異端者の力は大きいのです」と李さんはケラケラ笑う。

▽ ファッション雑誌を起点に「台北女子」を収集

「異端」からすると、「主流」や「流行」はてんびんの向こう側のはるか彼方にあるはずだ。だが「台女Tai-Niu:最辺縁的台北女子図鑑」は、女性ファッション誌「マリ・クレール」のコラム「台北女孩」を前身としている。テキストにも運命が存在するのだとすれば、その企画は誕生した時点で、非凡なものになることが運命付けられていたのだった。

李さん(右)=裴禛攝影
李さん(右)=裴禛攝影

林さんは最近オーストラリアで仕事をしており、李さんはファッション誌で働いている。李さんはManboさんや林さんとの出会いは2016年か17年だったと振り返る。「クラブで知り合ったんだっけ?」と李さんが首を傾げると、立派な口ひげを生やしたManboさんはすぐに「違うよ!アート仲間を通じて知り合ったんだよ。ただお酒を飲んでおしゃべりするのが好きなだけ」と突っ込みを入れる。

19年から毎月連載していた「台北女孩」の企画は、愉快なおしゃべりの中から生まれたものだ。「そうそう。みんな台北で暮らしているから、出会う女性の9割は台北在住です。皆が皆、本当の台北人というわけではないのですが、生活の場所は台北にあって、とても興味深い人たちなんです」(Manboさん)

「おしゃべりをしていると、『わ~、また面白い人と知り合ったんだ』といった話になり、その人たちを収集していくことをひそかに思い付いたのです」と李さん。「ポケモン」を遊ぶ人が新たにゲットしたポケモンを見せびらかすようなものだと形容する。

女性を取り巻く課題は、マリ・クレールが関心を寄せる話題の一つだ。「台北ガール」を収集する企画は徐々に形になっていき、Manboさんと林さんはフリーカメラマンとして連載終了まで企画に携わった。

▽ 「台北ガール」から「台北女子」に進化

ファッション誌は女性の特色あるメイクや服装に重きを置く。個性豊かな女性であればあるほど、そのスタイルは精彩を放つ。インスタグラムのフィルターデザイナーとして名をはせるトランスジェンダーの女性、モデルもこなすミュージシャン、リン・チャン(林強)の音楽を聞いて米国から台湾にやって来た女性―。これらは、レールに乗って生きるのとは全く異なる人生経験だ。つまり、主流と比べるとちょっと「異端」な女性たちだ。

知り合いの女性から、友人に紹介された女性、ユニークだと耳に挟んだことのある女性まで、記録される対象が増えるたびに、李さんは知らず知らずのうちにより多くの「異端者」を見つけ出し、連載の企画も厚みを増していった。

これが出版社に編集者として勤める友人の目に留まり、企画を1冊の書籍にしてみてはどうかと提案された。女性たちのスタイルの他に、彼女たちの人生の物語―何によって彼女たちが今のように特別になったのか―を深く探っていくという書籍。こうして「台北ガール」の企画は正式に「台女Tai-Niu」に進化していくことになったのだった。

雑誌連載で最も重視していたのは女性たちの外見だったため、書籍に登場してもらう人物を選ぶ際には台北女子の真の姿を示したいと考えたと李さんは話す。雑誌連載の時はさまざまな写真家に依頼し、女性たちをよりおしゃれに撮ってもらおうとしていたが、書籍に掲載される写真は、自宅や仕事場での台北女子たちの様子を記録したプライベート写真のようなものになった。そしてクィアがのぞくレンズはまるで魔力があるかのように、女性たちの警戒心を取り払うことができた。「台女Tai-Niu」に収録される台北女子は20歳から50歳まで。みんな見るからに自由奔放そうで、目が輝いている。

李さんは、男性の目を気にするかどうかというのは重要だと話す。Manboさんもこれに賛同する。「もし異性愛者の男性が撮影したとしたら、効果は違ったものになるかもしれません。撮影の過程ではこびを売るのではなく、本当の姿を彼女たちに見せてもらいたいのです」

▽ 異端の台北女子を捉える 

書籍化に当たっては、撮影や取材のやり直し、登場してもらう人物の追加などが必要だった。書籍には異端の台北女子だけでなく、異端の台北の風景―割れた盆栽や泥の水たまり、枯れゆく木々など―も登場する。麦畑に立つ捕手のように、文章であれ写真であれ、彼らはこの都市の端っこに立ち、一般の人が見えない鋭い球を受け止め、この端っこの風景を守っている。

都市の端っこの風景を撮影したのは、今はオーストラリアにいる林さんだ。林さんも自身を「主流の外」の「異端者」だと自認する。「クィアで同性愛者です。電子音楽とアンダーグラウンド音楽が好きです。書籍に収録される女性たちは外見やスタイルだけ見ても、年配者にとっては特殊すぎる存在です。彼女たちのように、社会に縛られない人こそが、私たちが捉えたい対象なのです」

これらの台北女子を撮影する過程においては、何かを特に強調しようとは思わなかったと林さんは話す。「彼女たちには天然の美しさがあり、彼女たちの物語は台湾の現代の女性が持ちうるある種の特質を反映しているからです。記録と雑誌撮影の間の感覚で彼女たちを捉えました。そして、私たちが撮影時に重視していたのは色です。色というのは、最も台湾を表せるものだと思うのです」

どの台北女子の物語が万華鏡のように現代女性の一つの姿を表しているかというと、それはEdieに他ならない。李さんとManboさんが取材の過程で最も特別だと感じた人物だ。

Edieさん(照片提供:大塊文化)
Edieさん(照片提供:大塊文化)

Edieとは何者か。彼女は実は本当の台北女子ではない。基隆出身の彼女は、若き日に近所の友人と台北に踊りに来た際、そのにぎわいときらびやかさに魅了された。そして17歳の年に音楽を愛する青年と恋に落ち、基隆から台北に引っ越した。さまざまな仕事をしながら彼氏を養い、若き青春の日々をこのように台北の都会で一日一日乗り越えた。

彼女の物語は友達伝いに映画監督のホウ・シャオシェン(侯孝賢)の耳に入り、映画「ミレニアム・マンボ」(千禧曼波)でスー・チー(舒淇)が演じた、愛に溺れる女性のモデルとなった。スー・チーが演じたビッキーという女性は、多くの観客に影響を与えた。李さんは書籍の中で「ただ、その後のEdieの物語をホウ監督は知りません」とつづる。李さんによれば、その後のEdieはドラッグ依存症となって刑務所に入り、電撃結婚をした。今ではひょうひょうとした見た目になっており、波乱万丈の人生を送ってきたのだという。

Manboさんは、Edieのことは友人から聞いたのだと言う。「彼女の物語を聞いて、とても特別だと思いました。実際に彼女の口から語ってもらうと、すごく素敵だと感じました」。李さんは、取材の誘いにEdieさんはとても喜んでいたと明かす。「彼女は刑務所で講演をして、自分の物語を他の受刑者に聞かせたいとずっと思っていたのです」

▽ 台北女子から「台女」を見る

異端の台北女子の姿を追いかけている最中、台湾女性を侮蔑を含む意味合いで指す「台女」も話題となり、ネットでよく使われるようになった。

李さんは、当時「台女」に関する投稿を検索して「とてもむかつきました。問題が大ありです。外国人しか目に入らず、エゴイストで、お姫様病とか言われていたのです」。Manboさんは、女性の見た目が伝統的な家父長制の期待にそぐわなかったとしたら、「台女」だと批判されやすくなるのだとの見方を示す。「でも実は、男性がこれらの女性を操縦できないのかもしれないのです」

社会の期待にそぐわないこれらの女性の役割は、主流社会の裏の面のようでもある。李さんらは、自分たちが探し求めている異端の台北女子は、別の角度から見れば人々が言う「台女」なのだとすぐに気付いた。彼女たちは自分らしくいすぎており、外の社会に縛られないからだ。

Manboさん(左)=裴禛撮影
Manboさん(左)=裴禛撮影

「異端であればあるほど、高貴なんです」。異端というのは、他の人の目を気にせず、自分が何を好むのか分かっており、他の人の価値観にとらわれないということだとManboさんは語る。書籍のタイトルに「台女」を冠したのは、あえての選択でもある。「台女」の呼称を称賛に変えたい思いが込められている。

李さんらが収録した20人の台北女子にはそれぞれに異なる人生があり、彼女たちの交わる点は、かつて台北に住んだことがあるということだけだ。「多様性」こそが彼女たちの最大の共通点だと李さんは話す。李さんが「台女」の特色を定義するとすれば、答えは「多様性」だ。多様性が彼女たちの姿を表すのだ。「『台女』の定義を覆したいのです。でも、20人の物語を通じて説教をしたいのではなく、それを書くことで読んだ人たちに自分なりの答えを見つけ出してほしいと思っています」(李さん)

「台女Tai-Niu」が貴重なのは、女性たちを「都会女子」や「カルチャー女子」「小ブルジョワ系女子」といった決まり切った型に分類せず、一人一人を「新しくて珍しい種」と見なしている点だ。それぞれの人物の特別さを記録している。

もし100人の台北女性がいれば、図鑑には100人の女子が載ることだろう。台北女性、あるいは台女は、李さんらにとっては、全ての人が勝手に定義されない価値を持っているのだから。

(王宝児/編集:名切千絵)

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