台湾の人々は信心深い。街中で寺廟を目にするたびに思う。商売、学業、恋愛、健康など、願いはさまざま。定期的に地元の寺廟を近況報告に訪れるという知人もおり、台湾人にとって寺廟は生活と切り離せない存在なのだと感じさせられる。記者は12月下旬、中部・台中市で最大の関帝廟「南天宮」を訪れた。
◆台中に初めてできた関帝廟
関帝廟には、三国志の英雄の一人、関羽を神格化した「関帝」が祭られている。高名な武将だった関羽は算術にも長けており、義に厚いとされることから主に商売の神として中華圏で広く信仰されており、関帝廟は台湾各地でもよく見られる。
1952年に台中市初の関帝廟として建立された南天宮は、台中駅から徒歩15分ほどの市街地にある。敷地内に入る前から、すでに線香の匂いが鼻先に漂ってきた。中に一歩足を踏み入れると、きらびやかな装飾がまず目に入る。奥にはずっしりとかまえる関帝が。その鋭い視線ににらまれ、思わず身が引き締まった。中央に据えられた香炉の足もとにはひざをついて熱心に何かを祈る人々の姿も見られた。
◆参拝は「龍から入って虎から出る」
南天宮は6階建てで、各階には関帝以外にもさまざまな神が祭られている。職員によると、どの階から参拝するか決まった順序はなく、1階から回る人、6階から降りてくる人、自身の目的に合った神様だけにお参りする人などさまざま。だが、どの廟でも天の神様「天公」から拝み始めるのが大原則だとされている。線香に火をつけたら、外に置かれた香炉の前に廟に背を向けて立ち、空に向かって敬拝してから中に入る。中に入ってからは、正面に向かって右から参拝を始め、左から出るのが正しい順序。これは廟の右側が龍、左側が虎だとされていて、「龍から入って虎から出る」と縁起がいいと信じられているからだそう。
線香は香炉の真ん中になるべく垂直に挿すように心がけた方がいいという。そうすると、神様に願いが真っ直ぐ届くと信じられているそうだ。
◆6階には東西南北中の財神が集結した「財神洞」
最上階にはフロアを「コ」の字型で囲むように設けられた「財神洞」がある。商売にご利益があるといわれている南天宮の特色の1つだ。財神洞の中には東西南北、中央と5つの方角の財運をつかさどる財神が集結。一人ひとり、お堂に安置され、思い思いの表情を浮かべている。入り口から中に入ったら、道筋に従って回るように参拝すると、ご利益が得られるという。
◆おみくじは神様に聞いてから
台湾にもおみくじがあるが、引く際には注意点がいくつかある。職員によれば、おみくじを引く前に、引いても良いか、三日月型の「ポエ」で神様に聞かなければならないという。2つで1組になっているポエを地面に落とし、表と裏の組み合わせが出れば引いても良いという合図。数回試しても、表と表や裏と裏の組み合わせしか出なかったら、その日は引かずに帰ったほうがいいという意味だそうだ。おみくじを引いた後も、そのくじが自分に合った数字かポエで聞こう。
この日、幸いにもお許しが出て、おみくじを引くことができた。おみくじの意味を教えてもらおうと解説員のもとへ向かうと、すでに何かを熱心に相談している男性がおり、他にも順番を待つ人が。必死に何かを訴える男性と諭すような口調で応じる解説員。しばらく待ったが、終わらなそうなので、あきらめた。
◆南天宮に僧侶はいない
一通り、参拝を終えて僧侶の姿が見当たらないことに気がついた。職員に尋ねると、僧侶個人の考えがしばしば廟全体に影響を及ぼし、それが神様の意向と合わないと良くないため、南天宮には僧侶などは置いていないと教えてもらった。
◆最後に
参拝の傍ら、写真を撮っていると、「撮影するときは神様に一言断りを入れたほうがいい。そのほうが、写り具合もきっと良くなるから」と参拝者に声をかけられた。台湾の人の神様を敬う気持ちが垣間見られた。
大きな廟で、1階から6階まで参拝するのもひと苦労。だが、現地の人々の敬けんな信仰心を体験する貴重な体験となった。
(楊千慧)