金城武が出演した航空会社のCMが撮影されたのをきっかけに一躍人気の観光地となった東部・台東県北部の池上郷。もともとはコメの産地として有名で、郷内には広大な田んぼが広がる。田んぼの中には自転車道が整備されており、のどかな景色を眺めながらサイクリングを楽しむことができる。記者は5月上旬、池上を訪れた。
中央山脈と海岸山脈に挟まれた平原、花東縱谷に位置する池上。池上は降水量が豊富で水や大気の汚染も少なく、稲作に有利な環境が整っていることから、イネの栽培が盛んに行われている。同地で生産されたコメは「池上米」のブランドとして台湾全土に名を馳せる。池上といえばもう一つ有名なのは「池上弁当」。1940年代に池上駅で販売された駅弁を起源としているのだが、池上米のブランドイメージとも相まって、現在では台湾全土で池上弁当と銘打った弁当が販売されている。
米どころとして有名だった池上は2013年、一層大きく脚光を浴びることになる。池上で撮影されたエバー(長栄)航空のCMで、俳優の金城武がお茶を飲むシーンに登場したアカギの木が「金城武の木」として注目され、連日観光客が押し寄せるようになったのだ。
池上の観光手段としては自転車が一般的。池上駅前にはレンタサイクル店が数軒あり、記者もここで自転車を借りてサイクリングに出発した。
駅前を出発し5分ぐらい走ると大きな池「大坡池」が目に入ってくる。この一帯は湿地となっており、珍しい植物や鳥、動物なども生息しているという。蓮の花が浮かんでいるのも見えた。
大坡池を通り過ぎると目の前に広がるのは見渡す限りの田んぼ。緑色の稲が広がる景色は絶景。都会の喧騒を忘れさせてくれる。
田んぼを横目にしばらく走ると最大の目的地の「伯朗大道」に到着。まっすぐに続く道の両側に田んぼが広がり、人気になるのも納得の美しさ。この日は平日だったにも関わらず、写真撮影やサイクリングを楽しむ観光客が多くみられた。
最近は金城武の木の近くに、新たに注目を集めるスポットが誕生している。歌手のジョリン・ツァイ(蔡依林)が同地を旅行で訪れた際に「私たちの木」として紹介した木だ。金城武の木に比べるとまだ知名度は高くないものの、地元の役所はこの「ジョリンの木」が新たな観光名所になるよう期待しているという。
金城武の木の見物を終えると、あとはひたすら田んぼ道を走り駅前に戻るのみ。途中には大水車や田園風景を一望できる大観楼(展望台)などもあり、一見の価値あり。
記者が体験したサイクリングコースは、駅前から出発して大坡池を半周し、金城武の木に続く伯朗大道を通ってから再び駅前に戻ってくるという全長11.5キロの一番短いコース。レンタサイクル店の店員は1時間半から2時間で回れると言っていたが、記者はのんびりと写真を撮ったり休憩したりしながら走ったため、合計3時間を要した。起伏は少ないため比較的ラクに走れるものの、レンタルした自転車が変速機のないいわゆる“ママチャリ”だったため、足への負担を感じた。レンタル店で自転車を選ぶ場合は、変速機付きを選ぶ方が快適にサイクリングを楽しめのではないかと思う。
(名切千絵)