泡湯
漢字文化をしっかりと守り続けてきた台湾は無論のこと日中両国も同じく漢字を使う国柄でありながら初めて相手の国に足を踏み入れ 現地での漢字の使い方に触れる瞬間、合点が行かない場合が多々ある。
何故なら 同じ漢字と言っても 時代の推移及び社会文化の変化により 元来の言葉遣いの意味合いやニュアンスが大分変わるからである。
一つの顕著な例として 「湯」(中国語読み タン)を挙げよう。
現代中国語では 「落湯雞」(ロウタンチイー)は勿論「ずぶ濡れ」を指すが「泡湯」(パウタン)は通常「温泉に浸かる」ことである。だが、「台無しになった」とか「パーになった」と言うスラングでもある。「湯」自体、 殆ど「お汁」 「お吸い物」 または中華スープのことを指すが、 日本語だったら煮沸されたまたは未だ熱い水である。
禅の公案や語録によく現れ譬えられる表現の一つに「湯婆子」(タンーポーヅ)がある。それは湯たんぽのことだが 妻帯者であるはずもない禅僧たちが冬の寒さを凌ぐためのお湯を入れた暖房用具である。
日本語だと思っていた「ユタンポ」、実は「舶来品」であるそうだ。湯たんぽは北京語の「湯婆子(タンーポーズ)」がそのオリジンである。