(カンヌ中央社)台湾のシーチン・ツォウ(鄒時擎)監督の監督デビュー作「左撇子女孩」(Left-Handed Girl)が現地時間21日、フランス・カンヌで開催中の第64回カンヌ国際映画祭の批評家週間で、スポンサーアワードの「ガンファウンデーション配給賞」を受賞した。ツォウ監督は授賞式で、同作は「記憶に対する行動であり、癒やしの過程だった」と話した。
台北の夜市で生きるシングルマザーとその2人の娘に焦点を当て、女の子が伝統的な家庭のしがらみと個人の意識の目覚めの間でもがく姿を描いた作品。カンヌ映画祭の最高賞パルムドールなどを受賞した米国のショーン・ベイカー監督が共同脚本を務めた。
批評家週間は若手映画製作者を支援する部門で、今年は1000本の応募作の中から11本が選ばれた。ガンファウンデーション配給賞の受賞により、「左撇子女孩」のフランスの配給会社に賞金2万ユーロ(約325万円)が贈られる。
ツォウ監督は受賞スピーチで「この作品は台湾で育った記憶が基になっている」とし、特に伝統的な家庭での緊張した関係や生活の中で見過ごされがちな声無き抗議に目を向けたと紹介した。
ツォウ監督は1998年に米国に留学し、2004年に当時新人だったベイカー監督と2人だけでインディペンデント映画「Take Out」を制作した。その後20年にわたり、プロデューサーや共同脚本などの形でベイカー監督の作品に参加し、iPhoneで撮影した「タンジェリン」(2015年)やカンヌ映画祭監督週間に出品された「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」(2017年)などはいずれも世界で高く評価された。
中央社の取材にツォウ監督は、「左撇子女孩」は実は2人にとって最初の作品となるかもしれなかったと明かす。同作の脚本は「Take Out」よりも前に着手しており、当時2人は台湾に戻って撮影場所の下見を行い、写真で短編作品を制作した。だが、映画の撮影に当たっては多くの場所と人物が必要になる一方で、「台湾の物語」は米国の映画産業では「外国語映画」となるため、当時は資金集めが困難で諦めるほかなかったという。
再挑戦を決めたのは2010年。台湾に戻って脚本を書き進め、台北市の通化街夜市で実地調査を行った。その時、5歳の女の子と出会い、これらのディテールを映画に加えていった。
米国に長年住んでいるものの、毎年台湾で旧正月を過ごして家族とだんらんしており、台湾には馴染みがあるとツォウ監督。反対に、年を重ねるにつれて台湾女性に対する観察や台湾の日常生活の描写はより成熟してきたと感じると話した。
20年温め続けた作品がようやく上映され、カンヌで好成績を収めた。「撮影時、台湾の美しさを改めて発掘しているような感覚を覚えた」とツォウ監督は振り返った。