(台北中央社)最大野党・国民党の朱立倫(しゅりつりん)党主席(党首)は7日、頼清徳(らいせいとく)総統について、「ヒトラーと同じことをしている」と批判した。これに対し、ドイツやイスラエルの駐台機関や与党・民進党から批判の声が上がっている。
朱氏は8日のヨーロッパ戦勝記念日を前にした7日、第2次世界大戦下で独裁制を敷いたドイツのヒトラーやイタリアのムソリーニを引き合いに出し、彼らは民主主義の名を借りて司法的な手段を使って野党を消滅させ、独裁者になったと指摘し、「頼総統の野党に対する行いはヒトラーがしたのと同じ」だと発言した。
この発言を受け、ドイツ在台協会(大使館に相当)は7日夜、公式フェイスブックを更新し、「朱氏の最近の言論に深い失望と憂慮を感じている」と表明。「今日の台湾を国家社会主義の暴政と比較すべきではない」と強調し、国民党幹部に対し、国内政治に関する言論において、不適切かつ歴史的敏感さを欠いた比較を行わないよう呼びかけた。
イスラエル駐台弁事処(同)も8日、フェイスブックで声明を出し、「ナチス政権の残虐な行為と現在の台湾の政治情勢を不当に比較したことに失望と憂慮を覚える」とし、各界の指導者に対し、大虐殺の歴史から教訓を得て、責任ある態度や発言をするよう求めた。
民進党で広報を担当する呉崢氏は同日、記者会見を開き、朱氏にドイツへの謝罪を要求した。朱氏の発言は他国の痛ましい歴史を安易に消費する行為だと批判した上で、ナチスの記号を誤った形で繰り返し利用する朱氏の行為は国際社会において台湾にマイナスの影響を与えていると指摘。歴史的記号を不適切に使用する行為や歴史の傷痕を踏みつける行為に対して謝罪すべきだと訴えた。
朱氏は8日午前、台北市内で報道陣の取材に応じ、民主主義もファシズムを生み、独裁になり得るということこそが人々が学んだ歴史的教訓だと主張。国際社会はともに独裁者を唾棄(だき)し、民主主義を傷つけて対立政党を迫害する可能性がある独裁者の肩を持つのではなく、民主主義や自由を守る立場で発言すべきだと訴えた。また、外国政府は民主主義を迫害する悪人の支援者になってはならず、各国の内政に干渉すべきではないと述べた。