台湾原住民(先住民)族ブヌン族が多く暮らす東部・台東県延平郷の公所(役場)前に、同族に伝わる伝説をモチーフにした、太陽に向けて弓を構える英雄の像が設置されている。高さ約5メートルもの大きさの像だが、弓には欠かせないはずの「矢」がない。地域の人々に話を聞くと、意外な理由が明らかになった。
複数の地域住民によれば、像が完成した2000年当時は矢があったが、矢が向けられた方向の先にちょうど集落があり、良くないのではという声が上がっていた。さらに像完成の翌年以降、矢の先にある集落では村長や公務員が相次いで病死したり、子どもが幼いうちに命を落としたりした。郷民や同集落の人々を中心に矢をなくしてほしいという声が上がり、それに応えて07年に矢の部分が取り外されたという。
像は青銅製だが、最近になってカラフルな色が施された。同郷の余光雄郷長は、新たな装いは新しいイメージを表していると説明。像の英雄は弦を引く力を試しているところなので、矢は無くてもいいと語った。
像のモチーフとなったブヌン族に伝わる伝説について、鸞山森林文化博物館の館長が記者に話してくれた。太古の昔、天には9個(2個との言い伝えも)の太陽があり、夜がなかったため、農作物が枯れてしまうなど人々は苦しい生活を送っていた。ある日一人の若者が弓矢で太陽の目を射抜き、太陽と話をすると、太陽は人々の辛さを理解し、昼と夜があるようにしたという。