(台北中央社)先月23日に起きた洪水に見舞われた東部・花蓮県光復郷では、今も生活再建に向けた活動が行われており、民間のボランティアも連日、現地を訪れている。これまでに2度被災地を訪れた、台湾で活動する俳優でモデルの加賀美智久さんが8日、中央社の取材に応じて現地の様子や心境を語った。
ボランティアの様子を伝えるニュースを目にし、自身も訪問を検討していたところ、友人がSNSで同行者を募集していたため現地に向かうことを決めた加賀美さん。先月28日に初めて光復郷を訪れた。当日は午前3時に友人の車で台北を出発。高速道路に入ると被災地に向かうとみられる車が増え、同じ気持ちを持つ人が多いことに感動した。
被災地に着くと、状況は想像以上にひどく感じた。この日は家屋に流れ込んだ泥の撤去などに従事。泥の中には住民の衣類や財布が入ったバッグ、写真などが埋もれており、被災者が準備をする間もなく逃げ出したのがよく分かった。
作業を手伝った家の住民は、当時の恐怖や被害の深刻さを話していた。誰かと話すことで少しでもストレスを発散したいのだろうと感じた。ボランティアたちは弱音を吐くことはなく、励まし合いながら和やかな雰囲気で作業を行っていた。
物資は余るほど準備されているように感じたため、物資の寄付よりも人手が必要だと考え、再訪を決めた。
2度目となる今月2日は鉄道で現地入りし、前回と同じ泥の撤去やごみの運搬作業などを行った。帰路に就く際、駅では外国人とみられる人を見かけた他、日本語で会話している声も聞いた。列車では近くにいた別の乗客の男性が「大変だったね」と声をかけ、席を譲ってくれた。男性は結局、花蓮から台北市内まで立ったままだった。
加賀美さんはSNSに「日本にだけ住んでいるんだったら地震や台風の被害を見てもかわいそうと思うだけだったかもしれない。でも台湾にいる僕は自分から進んで手伝いに行くようになった」とつづった。これについて詳しく聞くと、日本にいた頃はボランティアは個人で参加するのが難しいという印象があり、東京では近所付き合いも希薄で、他人に構わない生活を送っていたと振り返る。一方で台湾に住むようになってからは人との距離が近く、「気さくでプレッシャーのない人間関係を作れる」ようになったという。
さらに台北で毎月、犬の収容所でのボランティアに参加している経験からも、ボランティアは「気持ちさえあれば誰でも簡単に参加できる」と実感。「熱い友人が周りにたくさんいて、それにつられて一緒に熱くなれる」と話した。
9日にも光復郷に足を運ぶ予定で、現地の状況と自身のスケジュール次第では、その後も訪れることを検討しているという。被災地で今後必要なものを聞くと、「やはり人手」とした上で、再発防止に向けた計画の重要性も訴えた。
(田中宏樹)