(台北中央社)台湾大学と日本の国立研究開発法人、農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)の研究グループが、アズキの「栽培化」が縄文時代後期の日本で始まったことを明らかにした。研究成果が5月末に学術誌「サイエンス」に掲載され、農研機構と台湾大がそれぞれ6月2日までに報道資料で紹介した。
台湾大と農研機構によれば、これまでアズキはイネやムギと同様に、弥生時代に大陸から日本に伝わったとの見解が主流だった。近年ではアズキについて、野生植物が人為的な選抜によって作物となる「栽培化」が縄文時代の日本で始まっていたとの説も提唱されてきた一方で、科学的証明が不十分だった。今回の研究は、この説と合致する結果となった。
栽培アズキの祖先とされている野生種のヤブツルアズキは種皮が黒味を帯びているが、栽培アズキは遺伝子の突然変異で赤くなる。研究では多数のサンプルのゲノム(全遺伝情報)情報を分析したところ、変異型遺伝子を持つ個体がおよそ約1万世代前から増加し始めたことが示唆された。
この遺伝子変異が自然界での生き残りには不利なものの、調理適性や人の赤い色への嗜好性などから人為的な選抜の対象となることに加え、アズキが1年生の植物であることから、人類によるアズキの栽培は約1万年前には始まっていたと考えられるという。
台湾大は、縄文人が狩猟採集のみならず、原始的な農業の知識や栽培能力を有していることの裏付けとなったとしている。