(台北中央社)台北市大安区の大型公園「大安森林公園」のそばに架かる歩道橋の撤去計画を巡り、市民団体から反対の声が上がっている。この歩道橋ではかつて、映画やミュージックビデオ(MV)が数多く撮影され、地域住民だけでなく、映画・音楽ファンにとっても思い出の場所となっている。市は4日から撤去工事を開始する予定だったが、市民からの反発を受け、先送りする方針を示した。今後も市民と意思疎通を継続していくとした。
取り壊しが計画されているのは新生南路と和平東路の交差点にロの字に架かる「和平新生歩道橋」。台北市工務局新建工程処の資料によれば、橋は1982年7月に完成し、供用開始から42年がたつ。
映画やMVのロケ地としても知られ、エドワード・ヤン(楊徳昌)監督の「ヤンヤン 夏の想い出」(一一、2000年)やアン・リー(李安)監督の「恋人たちの食卓」(飲食男女、1994年)などの名作映画がこの橋で撮影された他、人気歌手のレイニー・ヤン(楊丞琳)やロックバンドのメイデイ(五月天)、韓国のアイドルグループ「少女時代」のヒョヨンなどの楽曲のMVにもこの橋が登場する。
台北市は安全性や周辺の交通安全環境の整備状況などを鑑み、供用年数40年以上の歩道橋の撤去を進めている。和平新生歩道橋を巡っては2015年に近隣地域の里長(町内会長)から使用率の低下を理由に撤去が提言されていたが、当時歩道橋の封鎖を試験的に実施したところ、近隣の学校からの反発やインターネット上での反対署名などもあり、撤去が見送られた。昨年7月に同じ里長から再び撤去の提案があり、市は供用年数がすでに42年に達し、使用期限に達していることを背景に撤去を決定。だが、先月末に工事予定の案内を貼り出すと強い反発を招いた。
撤去に反対する市民は署名集めを開始した他、今月2日に大安森林公園で行われた市主催のイベントで蒋万安(しょうばんあん)台北市長に直接抗議した。また、歩道橋には「撤去するな」などと抗議する紙も張られた。撤去を前に記念撮影に訪れる人の姿も見られた。
撤去に反対する市民団体は4日、記者会見を開催。発起人の林玟君さんは、市が撤去理由を明確に説明していない点や、点検を担当した企業の報告でも構造的な問題が指摘されなかったこと、市内にある供用年数55年の最も古い歩道橋も定期補修によって今もしっかり立っていることを挙げ、撤去するならば、市は科学的根拠を提示すべきだと訴えた。
市工務局新建工程処は、以前の道路は車を優先に設計され、歩道橋は歩行者が車両に道を譲るという考え方の産物だと指摘。歩行者の利用を優先する現在の交通上の観念にはそぐわなくなっているとした。また、歩道橋に建物との連結などの特殊な機能がある場合を除き、市の政策として歩道橋を徐々に撤去していく方針を採用しているとし、歩道橋をなくすことで、車両と歩行者の視界が開け、交通事故の発生率を最大限減少させられると主張した。市交通局は市内の別の交差点での事例を挙げ、歩道橋の撤去から1年で右折車の交通事故が6割以上減少したと紹介。歩道橋の撤去は自動車の運転の安全に寄与すると説明した。