(バチカン中央社)ローマ教皇を決める選挙「コンクラーベ」で、米国出身のロバート・フランシス・プレボスト枢機卿が8日、新教皇に選出された。中華民国(台湾)の李世明(りせいめい)駐バチカン大使は中央社の取材に対し、プレボスト氏は民主主義の台湾と共産主義の中国の違いをはっきり認識している人物だと評した。
李氏は2023年9月にバチカンで行われた新枢機卿の叙任式後にプレボスト氏と握手をし、言葉を交わしたことがある。自身が台湾出身だと紹介すると、プレボスト氏はすぐに「台湾を知っている」と応じ、台湾と中国の違いを明確に区別できたことが印象的だったと振り返った。
バチカンは欧州で唯一、中華民国と外交関係を有しており、中国とは1951年以降、断交状態にある。
李氏は、バチカンは中国に対して宗教の自由を発揚する立場を一貫して取っており、18年に中国と結んだ司教任命権を巡る暫定合意は、中国の信者が通常の信仰生活を送れるようにすることも狙いの一つにあったと分析。だが、最近の流れからすると、中国は習近平国家主席の「宗教の中国化」政策の推進をより重視していると指摘する。
4月に逝去したフランシスコ教皇は過去数代の教皇の中で中国に最も幻想を抱いていた人物だったと李氏。一方で、中国はフランシスコ教皇の葬儀へのいかなる司教の参列も同意せず、カトリック教会内では疑問視する声も上がっているという。
李氏は9日に帰国の途に就き、外交部(外務省)を定年退職する。次期大使には駐米代表処(大使館)に赴任した経歴を持つ賀忠義前駐南アフリカ代表処代表(大使に相当)が就任する。李氏は賀氏について、米国事情に詳しいとし、新教皇は米国籍であることから、今後の台湾とバチカンの関係はより発展することだろうと期待を寄せた。