(台北中央社)米大統領選挙は5日投開票され、台湾時間6日午後、共和党のドナルド・トランプ前大統領が「勝利宣言」した。選挙期間中、「台湾は米国に防衛費を払うべきだ」などと発言してきたトランプ氏。大統領就任後、台湾と米国の関係はどうなるのか。国防や地域経済、安全保障の専門家3人に聞いた。
▽国防安全研究院国防戦略・資源研究所(国防部シンクタンク)の蘇紫雲研究員兼所長(国防)
トランプ氏は1期目で、台湾への武器売却をかつてのパッケージ形式から順次承認する形に変更するとともに、台米間の軍事交流と台湾の軍の訓練に対する協力を深化させた。さらにこれらのかつては表立っては言えなかったことを表面化させた。そのため、トランプ氏は台湾に対して防衛費の支払いを求め、「台湾は軍事費を国内総生産(GDP)の10%まで引き上げるべき」などと発言したが、これは誇張だとみられる。実際の意味は「米国は北大西洋条約機構(NATO)や日本、韓国、台湾などに喜んで協力するが、これらの国もさらに公平に資源を費やして自己防衛するべき」だということだろう。
▽国策研究院文教基金会の陳文甲高級顧問(地域経済)
トランプ氏が「台湾は米国に防衛費を払うべきだ」と繰り返し述べたことは、台湾は安全保障協力上でより多くの財政面や実質面での義務を負うべきだとの考え方を反映している。今後の台米軍事交流において、米国は台湾が自ら防衛能力を向上させる責任を負うことを強調するようになるだろう。同時に、台米協力の公平性を確保するため、台湾により多くの軍事支出の分担を求めるだろう。
トランプ政権は一貫して台湾への武器売却を重視してきた。とりわけ先端武器装備を重視しており、今後は防空システムや無人機など新型武器にも拡大することだろう。
トランプ氏はかつて台湾の自己防衛力強化を何度も強調してきたことから、米国は軍事訓練への協力を有限の支持の形に転換するとともに、直接的に協力する訓練の項目を減らし、より多くの技術面や設備面の協力に切り替えるとみられる。
▽台湾大学政治学科の陳世民副教授(国際安全保障)
実業家の背景を持つトランプ氏が選挙戦で行った「台湾は防衛費を払うべきだ」との発言は保険会社の概念だ。台湾には「お金で解決できるなら大したことではない」との言い方がある。台湾が防衛分野でより多くの費用を支払うことで米国からの明確な安全保障を取り付けられるならば、台湾の人々は関連経費の支出を喜んで支持するだろう。だが、現在のように「戦略的曖昧」の状態にあってはならない。
トランプ氏の大統領就任後の台米の軍事面における影響は、起用する外交や国家安全の閣僚が共和党内のエスタブリッシュメントか、MAGA(米国を再び偉大に)派のどちらになるか次第だ。もしマイク・ポンペオ元国務長官やマルコ・ルビオ上院議員など台湾を支持する人物が要職に就けば、トランプ氏の1期目のように台湾との安全保障関係を強化する路線を継続し、2020年10月に決定した高機動ロケット砲システム「ハイマース」や空対地ミサイル「SLAM‐ER」など中国本土を直接攻撃できる武器の売却を重視するだろう。MAGA派が起用されれば、海外の軍事安全への約束を減らす可能性がある。台米の安全保障関係では、利益を優先にする方針になるだろう。