(台北中央社)原子力発電に関する卓栄泰(たくえいたい)行政院長(首相)のインタビュー記事が物議を醸している。行政院(内閣)の陳世凱(ちんせいがい)報道官は1日、核なき国家は法で定められた国家政策であり、現時点で変更はないとの立場を改めて示した。行政院院会(閣議)後の記者会見で述べた。
台湾の一部メディアは1日、「日本経済新聞が掲載した卓氏のインタビューで原発再稼働の可能性が示唆された」と見出しで日経新聞のインタビュー記事を報じた。これを受け、各界から関心が集まっている。日経新聞は7月26日付の紙面で卓氏の単独インタビュー記事を掲載。2025年に稼働がゼロになる原子力発電の将来的な活用について卓氏が「議論は可能だ」と語ったと伝えるとともに、「人工知能(AI)や半導体産業の電力需要に対応するため、30年代以降の活用検討を示唆した」と報じた。
台湾では16年に発足した民進党・蔡英文(さいえいぶん)政権下で脱原発目標が打ち出され、17年1月に25年の脱原発を目指す内容を盛り込んだ改正電気事業法が立法院(国会)で可決された。だが18年11月の国民投票で脱原発期限を定めた条文の廃止を求める案が賛成多数で可決され、同条文は同12月に失効した。台湾には、建設が凍結された第4原発(新北市)を含めて4カ所の原発があるが、第1、第2原発の計4基は昨年3月までに退役し、残る第3原発も1号機が先月27日に役目を終えた。稼働中の原発は第3原発2号機の1基のみとなっている。
台湾の一部メディアの報道を受け、陳報道官は1日、SNSの報道陣用グループを通じて声明を出し、「卓氏は日経のインタビューで2030年に原発を稼働させるとは言及していない」と台湾メディアの報道を否定。「一部の国内メディアが見出しを利用して故意に誤った方向に誘導したことは非常に遺憾だ」と表明した。