(台北中央社)先月20日に就任した李遠(りえん、筆名・小野)文化部長(文化相)は24日、台湾のコンテンツ業界について、今はまさに「台流」が台頭するタイミングだとの考えを示した。文化部(文化省)として、クリエーターを「指導」するのではなく、「支援、援助」する役割を果たしていく考えを示した。
作家として数々の小説やエッセーなどを発表する他、エドワード・ヤン(楊徳昌)監督の「恐怖分子」をはじめ、映画の脚本も多数手掛けてきた李氏。台湾のテレビ局で管理職を務めた経験もある。
李氏は2000年に台湾テレビ(台視)で番組部マネジャーを務めていた際のエピソードを紹介。当初は理想を胸に抱き、文学リメーク作品を数多く制作したいと考えていたものの、予算がかかりすぎるために韓国ドラマを調達するよう上司に言われたという。当時、韓国ドラマは1話20万台湾元。一方で台湾のオリジナルドラマは1話80万元だった。経営の角度からすると、テレビ局が台湾ドラマを撮りたがらないのは当然のことだと李氏は率直に話す。そのため、テレビをつけると放送されているのはいつも韓国ドラマという状況が生まれた。
この影響で台湾の映画・ドラマ業界は20年前後の遅れを取ることになったと李氏。08年に「海角七号 君想う、国境の南」が興行収入5億元を超える大ヒットを記録して台湾映画が起死回生を遂げるまで、最も悲惨な時では年間の台湾映画製作本数は10本に満たず、1本当たりの興行収入も100万元に届かなかった。
李氏は11年に韓国のイ・チャンドン監督と共に台湾の映画賞「ゴールデン・ホース・アワード」(金馬奨)の審査員を務めた際、イ監督から「台湾映画はかつての社会や豊富な文化の息吹を写し出すことができる」との称賛を得たものの、台湾は韓国の映像業界に大きく引き離されていることを感じたと振り返る。だが、昨年再び訪台したイ監督からは、韓流が次第に衰退し、映画・ドラマが過度に商業化、公式化されている状況を吐露されたという。
李氏は今はまさに「台流」が台頭するタイミングだとし、特にヤン・ヤーチェ(楊雅喆)監督やジョン・スー(徐漢強)監督などのミドル世代の映画監督が続々と素晴らしい作品を世に送り出している他、台湾ドラマも好成績を収めているとたたえた。
李氏は、台湾の民間の力はとても強力だと強調する。映像、出版、舞台芸術を問わず、文化部の支援プロジェクトやコンテンツ支援機関、通信会社との連携などによってクリエーターを支援していく考えを示した。
「台流」の海外進出をいかにして支援し、中国市場をどのように見るかとメディアから聞かれると、かつての映像業界は台湾と中国の両方を満足させようとするものの、題材が観客の好みを満たすのが難しく、興行収入は悲惨な状況で終わっていたと指摘。台湾の創作環境で最も尊いのは「自由」だとし、目標を世界に向け、中国に売れればもうけものといった姿勢を持つべきだと述べた。