(台北中央社)総統府は15日、南太平洋の島国ナウルとの断交について、台湾が総統選を無事終えられたことを全世界が祝福する中で、北京当局が外交的圧力をかけたことは「民主主義の価値観への報復だ」と非難した。
外交部(外務省)は同日午後、ナウルが中国代表権を巡る国連総会2758号決議(アルバニア決議)と一つの中国原則を理由に中華民国(台湾)と断交するとの情報を受け、ナウルとの外交関係を即日断絶することを決めたと発表した。中華民国とナウルは1980年に国交を樹立したが、2002年にナウルが債務問題を背景に中国と国交を結んだことから一度は断交した。だが中国が約束した援助の多くが実現しなかったことから、ナウルは05年に中華民国との外交関係を回復させていた。
同部の田中光政務次長によれば、同部は中国がナウルの政府要人と積極的に接触し、経済援助を餌に外交関係の乗り換えを働きかけているとの情報を昨年の時点で把握していた。ナウル議会は昨年10月30日、デービッド・アデアン氏を新大統領に選出し、両国の関係は一時は安定していたものの、新政権発足後、難民認定を求める人々を収容する「ナウル地域処理センター」(PRC)をオーストラリアが閉鎖したことによる巨額の財政赤字やミクロネシア地域のスポーツ大会「ミクロネシアンゲームズ」の26年開催に伴う競技場の建設費などを名目に巨額の経済援助を台湾に要求していた。それと同時に、ナウルは台湾と中国からそれぞれ提示された援助案を比較していたという。
田氏は、中国の金銭的誘惑に目がくらみ、ナウルが台湾の長年の協力や友情を顧みずに中国と国交樹立の交渉を進めたことに対し、政府として「沈痛な思いと遺憾の意」を表明した。
総統府の林聿禅(りんいつぜん)報道官も同日、報道資料を通じ、ナウルが北京の誘惑の下で双方の人々の利益と地域の安定に無益な誤った決定を下したことに「強い遺憾」を示した。
総統選は13日投開票され、中国と距離を置く与党・民進党の頼清徳(らいせいとく)副総統が勝利した。
民進党の蔡英文(さいえいぶん)政権が2016年に発足して以来、断交した国は10カ国目。外交関係を結ぶ国は12カ国になった。