(新北中央社)清朝末期に起きた牡丹社事件や当時の台湾人の暮らしに関するロシアの資料を集めた特別展が10月30日、北部・新北市の国立台湾図書館で始まった。ロシアの研究機関、ロシア科学アカデミー東洋学研究所のバレンティン・ゴロバチョフ副所長は、当時の資料から台湾人の善良さや純粋さが感じられると語っている。
牡丹社事件は、台湾南東部に漂着した宮古島民54人が台湾原住民(先住民)族パイワン族に殺害されたのを受け、1874年に日本軍が南部に侵攻し、恒春半島一帯で約半年間にわたり占領体制を敷いた一連の出来事。
展示の企画、構成を担うキュレーターを務めた台北教育大学(台北市)の楊孟哲非常勤教授によると、日本軍の侵攻時にはロシア軍人のチェレンチェフが戦況を観察した他、その後に台湾の戦略的重要性を認識した同じく軍人のイビスが現地調査を行った。2人が残した資料はロシア・サンクトペテルブルクの海軍文書館が所蔵しており、今回初めて展示されるという。
ゴロバチョフ副所長は中央社の電話取材に、イビスは身ぶり手ぶりで意思疎通し、狩猟生活を通じて頭目を含む原住民や宣教師らと交流を深め、メモやイラストで当時の台湾の人々や社会、原住民語、風俗を記録したと説明。チェレンチェフは日本軍の侵攻に賛同せず、平和的な外交手段で問題を解決すべきだと考えていたことが分かると述べた。
またイビスが訪問した場所をロシア人旅行家が2014年に訪れた記録なども併せて紹介しており、世紀を超えた台湾のイメージや歴史的価値が見られるとしている。11月17日まで。