沿線で天灯飛ばしなどが楽しめることから、週末には多くの人で賑わう台湾北部のローカル線「平渓線」。日本統治時代に炭鉱開発のために敷かれた鉄道を前身としているため、沿線には当時の面影を残すスポットが点在している。記者は菁桐駅から十分駅までの周辺にある日本統治時代関連のスポットを巡った。
平渓線の終点、菁桐駅の周辺一帯は1920年代に炭鉱集落として繁栄した。1929年に開業した菁桐駅は現存する数少ない木造駅舎の一つ。1994年に大規模改修されたものの、日本統治時代に使われていた机や貴重品ロッカーなどは現在でも残り、昔ながらの風情が漂う。
駅のすぐそばにはかつての炭鉱業の様子を紹介する「菁桐鉱業生活館」が。当時の写真などが展示され、歴史に触れることができる。
菁桐駅のお隣、平渓駅周辺には古い街並み「平渓老街」があり、石畳の路地には古くから続く商店や飲食店が軒を連ねる。
十分駅周辺は、炭鉱業で栄えた平渓において、最も早く開発され、最大の規模を誇る地区。現在平渓観光の目玉となっている天灯飛ばしは1990年代ごろから観光資源としてPRされるようになったもので、十分は天灯発祥の地とされる。「十分老街」には天灯関連の商店や工芸品店、飲食店が立ち並び、週末には多くの観光客が押し寄せる。また、線路上やその周辺で天灯を上げる光景は同地の名物ともなっている。(注:線路への立ち入りは法律で禁止されており、違反者には罰金が科される)
天灯や古い街並みで人気を集めている平渓線沿線。日本統治時代の施設の多くは目立たない場所にあり、ただ沿線を観光するだけでは見過ごしてしまいがち。今回紹介したスポットのほかにも、招待所として1939年に建設された台陽倶楽部(太子賓館)や炭鉱開発に従事した職員の住居として使われた日本式宿舎群など、日本統治時代の施設は数多く残されている。天灯を飛ばすついでにでもこのような場所を巡り、日本と台湾の歴史に思いを馳せてみてはいかがだろうか。
(名切千絵)