(嘉義中央社)長年、農業県として発展してきた南部・嘉義県。今でも台湾の農水産業における重要生産地であることに変わりはないが、近年では科学技術分野でも存在感を増している。短期間でいかにして変化を遂げられたのか。翁章梁(おうしょうりょう)県長は、タイミングを逃さず、有利な投資環境を創出したことに加えて、中央政府の支持を取り付けた結果だと話す。
26日までに中央社の単独インタビューに応じた。
翁氏は2018年12月に嘉義県長に就任。現在は2期目を務める。科学技術分野の発展について、翁氏は無人機産業を例に挙げ、最初から無人機産業の発展を目指していたわけではなく、縁とタイミングを生かせたからこそ発展の機会をつかめたと語る。
県には当時、台湾体育運動大学(台体大)のキャンパス移転に伴って残された5000坪の建物と、台湾糖業から借り受けた10ヘクタールの土地があった。県は当初、台湾海洋大学と協力して養殖産業の発展に活用する予定だったものの、少子化などの影響で計画は立ち消えとなった。転機が訪れたのは18年。政府系研究機関、国家中山科学研究院が県民雄郷に無人機の生産拠点を設けるとの計画を聞き、無人機業者に台体大旧キャンパスを案内したところ、土地が広くて開けているために無人機の試験飛行に適しているとして非常に好意的な姿勢が示された。これを機に、この土地は無人機の拠点「アジア無人航空機イノベーションアプリケーションR&Dセンター」(亜州無人機AI創新応用研発中心)として生まれ変わることとなった。
「私たちが遅れを取っている象徴だと思っていたものが、何らかの先進産業にとってはふさわしい場所だった」と翁氏。新たに誕生した同センターには50を超える産官学の組織が入居している。蔡英文(さいえいぶん)総統(当時)は22年、嘉義県は無人機のテストを行う重要な地域になるとし、県内で無人機のナショナルチームを結成すると宣言した。これによって中央政府の各部会(省庁)の資源が投入され、県の発展の方向性が確立されることになった。翁氏は「この決定は非常に重要だった」と振り返る。
今後も県内で関連施設が増設される予定で、無人機の研究開発、生産、テストが県内で「一気通貫」で行われるようになると翁氏は期待を示した。
科学技術分野の発展に注力しているものの、農業の発展も忘れてはいない。県内には8万ヘクタールの農業用地があり、農業は県の根幹を成す。翁氏が打ち出す県政スローガン「農工テクノロジー大県」では「農」を頭に置く。
「今後の農業は必ずやスマート農業の方向に発展していく」との見方を示す翁氏は、県としてスマート農業の導入を指導している他、小規模農家には導入のための補助金を給付するなどの取り組みを行っていると紹介した。