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総統選/総統選、海外メディアはどう見るか 関心の中心は「台湾海峡の平和」 特有の課題も

2023/12/16 18:48
各党の総統選候補。左から与党・民進党の頼清徳副総統、国民党の侯友宜新北市長、民衆党の柯文哲前台北市長
各党の総統選候補。左から与党・民進党の頼清徳副総統、国民党の侯友宜新北市長、民衆党の柯文哲前台北市長

(台北中央社)総統選は来年1月13日の投開票まで残り1カ月を切った。米中が対立する中、地政学的に注目される台湾は、総統選と立法委員(国会議員)選が間もなく実施されることから、現在海外メディアにとって主戦場の一つとなっている。外交部(外務省)の統計によれば、選挙取材のために訪台した海外の記者はすでに170人を超え、台湾に駐在する海外メディア記者70人余りから選挙取材の申請があった。海外メディアは総統選をどう見ているのか。海外メディアの記者複数人に話を聞いた。

▽ 関心の中心は「台湾海峡の平和」への影響

ドイツの国際公共放送ドイチェ・ベレの鄒宗翰台北事務所主任は、海外メディアにとって総統選の最も主要な切り口は、選挙が両岸(台湾と中国)と台湾海峡情勢に与える影響だと指摘する。国際社会が関心を寄せるのはどの候補者が「台湾海峡の平和を最も守れるか」という点だとの見方を示す。

台湾外国人記者クラブ(TFCC)の周浩霖会長は、台湾はアジアで重要な民主主義体制で、世界の半導体製造の中心でもあり、中国の侵略、拡張の前線に位置するとし、次期総統の外交、国防、安全保障政策は台湾や地域、そして世界のサプライチェーン(供給網)に巨大な影響を及ぼすことから、これが海外メディアが注目する焦点になっていると話す。

台湾外国人記者クラブ(TFCC)の周浩霖会長(本人提供)
台湾外国人記者クラブ(TFCC)の周浩霖会長(本人提供)

▽ 有権者の焦点、両岸問題に偏り 実質的な政策の議論少なく

台湾の人々が低賃金や不動産価格の高騰、高インフレなどの問題に関心を寄せる一方で、候補者は実質的な政策に関する議論をあまりしていないとの意見も多くのメディアから聞かれた。

デンマークの大手紙Berlingskeのアジア記者、アレクサンダー・シェーベリ氏は、両岸問題への注目が高まった影響で、反対に社会福祉や税収、政策革新などの重要な問題について厳粛な議論を行うのが難しくなっていると指摘。「これが台湾の今回の選挙における主な問題だ」との見解を述べた。

フランス紙フィガロなどに記事を提供しているフランス出身の記者、アリス・エレ氏も同様の考えを示す。ロシアによるウクライナ侵攻を背景に、台湾の有権者が台湾海峡における衝突の可能性をより真剣に考えるようになる中、有権者は候補者の対中路線に注目し、死刑制度の存廃をはじめ、両岸以外の議題の多くは棚上げされていると指摘した。

香港出身の匿名記者は、候補者にはもっと市民生活の問題、特に急激に高騰した物価について語ってほしいと話す。候補者に「今のトマト1斤の値段はいくらか知っているか」と尋ねてみたいと語り、地政学は国際社会が主に注目する視点かもしれないが「固定化」し過ぎており、台湾の人々の日常生活への感じ方を細かに説明することはできないとの見方を示した。

▽ 消去法で投じる人も 旧来の二項対立に嫌気

台湾の選挙でよく見られる「涙をのんで投票する」という現象を感じ取っている海外メディア記者もいる。チェコのインターネットメディアAktuálněの記者、ヤナ・バクラビコバ氏は、有権者は家賃高騰や低賃金に対する政府の対応に落胆しているにもかかわらず、それでも現政権を握る民進党に投票するという人も多いと話す。「より良い選択肢がないからだ」とし、民進党に不満を抱きながらも、最大野党の国民党に票を投じたくないという理由で民進党に投票すると考えている人もいると明かした。

シェーベリ氏は、第3党の民衆党が台頭した理由の一つは、中国支持か反中国かという二項対立を超越した弁論を有権者が見たかったからだと指摘する。民進党はLGBTなど性的少数者の権益促進においては象徴的な変革をもたらしたものの、低賃金や家賃、生活費の高さなどの問題ではあまり進展がなく、国民党は両岸政策の歴史的な足かせから抜け出せていない。シェーベリ氏は「多くの有権者はすでにこの点を超え、台湾が自分の道を歩んでいくことを望んでいる」との見解を述べた。

チェコのインターネットメディアAktuálněの記者、ヤナ・バクラビコバ氏(本人提供)
チェコのインターネットメディアAktuálněの記者、ヤナ・バクラビコバ氏(本人提供)

▽ 台湾式の民主主義に世界が注目

米国出身の中央研究院のネーサン・F・バット副研究員は、今回の選挙戦はこれまで見てきた中で、選挙前の「らしさ」が最も薄い一年だと語る。それでも、選挙は台湾特有の民主主義文化を感じられる貴重な機会でもある。

数カ月前に台湾に来たばかりのバクラビコバ氏は、開票の際に各候補者の事務所に足を運ぶ計画をすでに立てていると明かす。有権者の悲喜こもごもを最前席で感じることを楽しみにしているのだという。かつて見た台湾の開票の映像で人々が泣いたり笑ったりする様子を目にしたといい、「チェコではこのような開票イベントはない。みんな家でテレビ中継を見るだけだ」とチェコと台湾の違いを語った。

ミャンマーに駐在した経験を持つ周氏は、台湾の選挙は2020年に取材したミャンマー総選挙を思い起こさせると話す。「当時は新型コロナウイルスの影響があったにもかかわらず、人々は投票に出かけ、投票によって軍による統治に対抗した」。選挙活動が活気にあふれ、エネルギーに満ちている点で台湾とミャンマーの選挙は似ていると話し、台湾も民主主義を大切にして自由で公正な選挙を実施し、メディアや言論の自由、その他の市民的自由を確保してほしいと願った。

スイス放送協会の海外向けニュースサイト、スイスインフォ記者のブルーノ・カウフマン氏は、民主主義の深化や民主主義の参加性・開放性の拡大に関する候補者の見解をより多く知りたいと語る。台湾には非友好的で干渉してくる隣国がいるものの、台湾の人々は投票によって主権や権利を行使する用意ができているとし、選挙の成功は国際社会における政治的地位を強化する最良のアプローチだと述べた。

(鍾佑貞、鄧佩儒、林秉学、葉允凱、蕭伃君/編集:名切千絵)

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スイス放送協会の海外向けニュースサイト、スイスインフォ記者のブルーノ・カウフマン氏
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