(ニューヨーク中央社)第95回アカデミー賞で作品賞など主要賞を独占し、最多7冠に輝いた「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」。メガホンを取ったうちの1人、ダニエル・クワン(関家永)監督を映画の道に進ませるよう背中を押したのは台湾人の母、関沈俊龍さんだった。
俊龍さんは15日、中央社の電話取材に応じた。同作は家族の問題や経営するコインランドリーの赤字に悩まされる平凡な母親が世界を救う物語。アジア人俳優として初めて主演女優賞に輝いたミシェル・ヨーが演じた主人公のエブリンに自身が重なって見えたと俊龍さんは話す。
米国で育ったクワン監督が長編2作目の主人公にアジア系移民の母親を選んだことに感動したという俊龍さん。作品ではアジア系移民の親と米国に生まれた子どもとの対立や葛藤も描かれている。
俊龍さんは米国に移民後、4人の子どもを育てる中で「子どもの心に従う」ことを心掛けてきたと語る。できるだけ子どもに主導権を委ね、好きなようにやらせる。多少のアドバイスをすることがあっても、最終的な選択は任せてきた。「転ぶなら自分で転ばなきゃ」
俊龍さんによれば、クワン監督は幼い頃から小説好きで想像力も豊かだったが、芸術の道を真っすぐ突き進んできたわけではなかった。それまでは方向性が定まらず、不得手なことを強いられると何もできない様子だったという。
クワン監督に映画や舞台、芸術分野に強いエマーソン大への転学を勧めたのは俊龍さんだった。才能ある人だけが学ぶべきと自信を持てずにいたクワン監督を力強く励ました。
俊龍さんはかつて「台湾大卒」という学歴のために自身が志していた分野ではない専攻を選んだ。子どもには好きな道を進む勇気を持ってほしい。「母親にとって最も大切なことは、子どもに人生の目標を見つけさせてあげること」と胸を張った。