(東京中央社)がん患者の治療薬選択を支援する技術の開発を進める台湾のバイオスタートアップ企業、キャンサーフリー・バイオテック(精拓生技)が、福岡市主催の国際ビジネスマッチングイベント「RAMEN TECH」のピッチコンテストで優勝した。同社の陳柏翰執行長(CEO)は中央社の取材に対し、受賞によって「台日の友情を深化させられれば」と期待を寄せた。
同イベントは今月9、10日に福岡市内で開催。ピッチコンテスト「ASIA NEXT UNICORN AWARD」には8の国・地域から16社のスタートアップが参加した。
同社は、患者の血液サンプルから取り出したがん細胞を研究室で培養し、培養した「アバター(分身)」のがん細胞を用いて各種の治療薬を試すことで、適切な治療法の選択を支援するという技術の開発に尽力している。これまでに100を超えるがん種の治療において1500人以上の患者を支援した。がん細胞の培養技術は台北医学大学から技術移転を受けた。
陳氏は、がん治療の選択肢はますます増えているものの、患者や家族にとって最も難しいのは、どの薬を選べばいいか分からないという点だと話す。医師は「試さないと分からない」と言うが、それは患者が身をもって試すということに他ならない。同社の技術を用いれば、患者自身が実験用マウスになる必要がなくなり、一度に数多くの薬を試すことができる。「RAMEN TECH」では、生まれた直後に脳腫瘍と診断された子供に対して同社の技術を通じて適切な薬を見つけ、その子供は今年6月で3歳になったとの事例を紹介した。
かつては米国でデータベースのエンジニアをしていた陳氏。父親ががんと診断されたのをきっかけにがんのアバター医療技術の存在を知った。2018年、父親のがんが3度目の再発をしたのを機に米国から台湾に戻り、父親の闘病に付き添う傍ら、同社を立ち上げた。
同社は5月に東京都が主催したピッチコンテスト「SusHi Tech Challenge」でも東京都特別賞など二つの賞を受賞。その後、日本の製薬会社数社から問い合わせがあった。すでに筑波大学発のスタートアップと契約を結んでおり、現在は日本の患者に同社のサービスを提供するため、病院との接触を担う業者を探している段階だという。
日本での会社設立も検討している。日本での会社立ち上げは容易ではないものの、「SusHi Tech」での受賞後、サポート職員が東京都から派遣されるなど各方面からの支援のおかげで、設立に向けた動きは進展していると陳氏は明かした。