(東京、台北中央社)日本語に翻訳された刊行物が対象の「日本翻訳大賞」の受賞作が19日に発表され、台湾の小説家、楊双子さん著、三浦裕子さん訳の「台湾漫遊鉄道のふたり」(原題:台湾漫遊録)が選ばれた。台湾の作品としては初受賞。1938(昭和13)年の台湾を舞台に、台湾人と日本人の女性が二人で鉄道旅行をし、仲を深めていく物語が描かれている。
「楊双子」は双子の姉妹、楊若慈さんと楊若暉さんの共同ペンネーム。主に姉の若慈さんが創作を、妹の若暉さんが歴史考証や日本語の翻訳を担当し、台湾の歴史や女性同士の恋愛を題材にした「台湾歴史百合小説」を二人で発表している。
楊双子さんは同日、フェイスブックを更新し、同賞は完全に翻訳者の三浦さんに対する賞だとし「非常にうれしい」と受賞の感想をつづった。日本語訳版の刊行に当たり、台北駐日経済文化代表処台湾文化センターや日本で台湾・香港書籍の版権を扱うエージェント「太台本屋」から支援を受けたとし、感謝を示した。
同作の日本語訳版は2023年4月に出版された。同作品は「肉臊」(ひき肉の煮付け)や「鹹蛋糕」(肉そぼろサンドカステラ)など12のグルメを各章のタイトルに設定。背景が異なる日本人作家と台湾人通訳がこれらのグルメを味わいながらストーリーが展開する。二人とは別の考え方や立場を持つ台湾生まれの日本人「湾生」も登場する。
同賞は14年に始まった。10回目の今回は「台湾漫遊鉄道~」を含め2作が受賞した。授賞式は7月6日に東京都内で開かれる。