(エディンバラ中央社)英エディンバラ大学に保管されていた、牡丹社事件(台湾出兵)の犠牲者とされる台湾原住民(先住民)族パイワン族4人の頭部の遺骨が現地時間3日、台湾の関係者に返却された。台湾には5日に戻る予定で、原住民族委員会のイチャン・パルー主任委員(大臣)は、原住民族の歴史と正義上の大きな突破だと語った。
牡丹社事件は1871年に台湾南東部に漂着した宮古島民54人がパイワン族に殺害されたのを受け、74年に日本軍が台湾南部に侵攻し、マツァツクスと呼ばれた南部・屏東県牡丹郷の石門で激しい戦闘が展開され、その後日本が恒春半島一帯で約半年間にわたり占領体制を敷いた一連の出来事。
エディンバラ大は、4人は宮古島民の殺害に関与した可能性は高くないとした上で、遺骨は日本軍侵攻時に、当時軍事顧問として雇われていた米国軍人によって持ち帰られ、1907年から同大に保管されていたと説明する。同大ではこの日、遺骨返還の儀式が行われ、関係者は台湾との国を超えた協力の頂点だと語った。
イチャン・パルー氏は、返還に関する交渉は2021年から始め、22年7月にエディンバラ大が返還の意向を示したと振り返る。遺骨は台湾に到着後、南部・台南市の国立台湾史前文化博物館南科考古館で調査が行われるが、パイワン族の人々にとっても遺骨の返還を受けるのは初めてのため、今後どこに保管されるかは決まっておらず、牡丹郷の人々と意思疎通を図るとの方針を示した。
また台湾原住民族の多くの遺骨が他国に持ち去られているとした上で、今回のケースをきっかけに、文物や遺骨の返還や台湾での里帰り展示などが望めるとし、交流を促したいと期待を寄せた。