(台北中央社)台湾の出版社「八旗文化」の編集長、富察(本名・李延賀)さんが3月末に中国で消息を絶ち、現地で身柄を拘束されているとみられる問題で、富察さんに関心を寄せる有志らでつくられた支援団体は12日、台北で記者会見を開き、両岸(台湾と中国)間の正常な文化交流を傷つけないためにも、中国に対して慎重な対応をするよう呼び掛けた。
富察さんは中国遼寧省出身。台湾へ移住後、2009年に八旗文化を設立し、13年に台湾の居留証を取得した。富察さんの友人によると、3月に親族を訪ねるため、中国に帰省した後、連絡が取れなくなったという。中国で対台湾政策を担当する国務院台湾事務弁公室(国台弁)は先月26日、国家の安全に危害を加える活動に関与した疑いがあるとして情報機関の調査を受けていると発表した。
八旗文化が手掛けた書籍には熊倉潤さん著「新疆ウイグル自治区 中国共産党支配の70年」の繁体字版などがある。
支援団体は、中国に対し、富察さんが家族や弁護士と連絡を取れるようにするなど、中国の法律が定める権利を享受できるようにすべきだと訴えた他、速やかに調査結果を公表するように求めた。
会見に同席した国境なき記者団のセドリック・アルビアーニ東アジア総事務局長は、富察さんの出版社について、中国にルーツがありながらも中国政府を批判する書籍を発行した出版者の一人だと説明。中国に対し、富察さんの現在の居所など詳細な情報を提供し、富察さんが即座に台湾で暮らす家族の元に戻れることを保障するよう呼び掛けた。
団体はこの日、富察さんの支援に賛同する出版界や学術界、メディア界などの関係者350人以上のリストを公表。日本人研究者や米国人記者の名前なども含まれていた。