(花蓮中央社)東部・花蓮県卓渓郷の山間部にある三笠山集落に9日、タイワンツキノワグマが出没した。同集落にクマが現れたのは初めて。クマは農業部(農業省)林業・自然保育署花蓮分署の職員に捕獲された。クマは体長1メートル未満で雄の子グマと見られ、痩せ細っていたため処置を受けている。
同分署によれば、9日午前に「クマがニワトリを襲っているのを目撃した」との通報が住民から入り、職員が現場を調査した上で赤外線カメラを設置した。住民は同日夜7時ごろ、クマが小屋に侵入しているのをカメラで捉えたとして再び通報。同分署と協力してわなを2基設置し、午後9時45分ごろに捕獲に成功した。
クマは野生動物の救護を行う東部・台東県内の動物病院に送られ、検査で雄の幼獣であることが分かった。体重12.3キロ、体長99.5センチで、目立った外傷はないものの、体が痩せ細っていて栄養状態が悪いため、病院は栄養補給や健康観察などを続ける。同分署は今後、野生に返すかを検討するとしている。
同分署の朱懿千副分署長は中央社に対し、周辺では他の個体は確認されていないとした上で、今後も周辺で監視カメラの設置を続け、他の個体の活動の有無を確認すると説明。クマやクマとみられる足跡を見かけた際には同署の専用ダイヤルに即座に通報するよう呼びかけた。
今回通報した住民には、直ちに通報して冷静に対応し、捕獲作業にも協力したとして報奨金3000台湾元(約1万5000円)が支給される。赤外線カメラの設置に1カ月以上協力すれば、さらに5000元(約2万5000円)が与えられるという。
▽専門家「日本のような状況にはならない」
台湾黒熊保育協会創設者の黄美秀氏(屏東科技大学教授)は中央社の取材に応じ、台湾では今年、クマの攻撃的な行動がこれまでよりも顕著になっていると指摘。また、日本ではクマの元々の個体数が多い上に増加傾向にある一方で、タイワンツキノワグマは絶滅危惧種に指定されているほど少ないため、短期的にはクマによる被害が相次ぐ日本のような状況にはならないだろうとの考えを示した。