(台北中央社)頼清徳(らいせいとく)総統は5日、中華民国(台湾)がアフリカで唯一外交関係を持つエスワティニ(旧スワジランド)訪問を終え、台湾に戻った。復路でも「中国による妨害」の影響を受けたとみられるが、インド洋南側を東進する遠回りのルートを取った。専門家は今回の外遊について、難易度の高い外交上の難局突破に成功したとし、台湾の戦略的な強靭(きょうじん)性と後方支援能力を示したと語った。
頼総統は当初、先月22日からエスワティニを訪問する予定だった。搭乗機が上空通過を計画していたセーシェル、モーリシャス、マダガスカルが管理する「飛行情報区」(FIR)の飛行許可を取り消したため、急きょ出発を見合わせたものの、今月2日にエスワティニ国王の専用機を利用して訪問した。
航空機の動きを追跡するウェブサイト「フライトレーダー24」によると、復路では頼総統が乗ったエスワティニ国王の専用機は4日午後6時40分に現地空港を離陸。南東に進み、台湾への最短ルートとなる北東側を避けた。その後、フランス領南方・南極地域やオーストラリア・メルボルンのFIRを通過し、インドネシア・ジャカルタやフィリピンの上空を経て、台湾に戻った。
総飛行距離は約1万3000キロ。専用機のエアバスA340-300型機の航続距離の限界に近い飛行となった。
▽総統の外交活動で重要な手段に
国防部(国防省)のシンクタンク、国防安全研究院の蘇紫雲(そしうん)国防戦略・資源研究所長は、今回の専用機は元々チャイナエアライン(中華航空)の旅客機で、台湾側は整備面などの後方支援に熟知していたと指摘。安全確保のために操縦資格のあるパイロットを同行させていた可能性があるとした。
また「到着後に公表」(ATA)する手法は、米国のオバマ元大統領やトランプ大統領が敏感な地域や紛争地を訪問する際に採用していたと説明。友好国の専用機を利用することについても前例があるとし、外遊の手法は多様化しており、外交リスクを分散させるのに有効だと語った。
一部の国が専用機の通過を認めなかったことは、領空は国家主権に属するため、不許可にする可能性はあると説明。ただ、領海基線から24カイリ(約44キロ)外の空域に設定されるFIRは国際慣例上、軍用機や公用機などの進入について高度な柔軟性があるとの認識を示した。
その上で、今回の訪問は後方支援体制、ATA、友好国専用機の活用、FIR運用の柔軟性を組み合わせたもので、今後総統の外交活動を円滑に進めるための重要な手段になると述べた。
▽正常かつ尊厳ある待遇訴え
一方で、民間のシンクタンク、国策研究院文教基金会のディレクターで、成功大学の王宏仁教授は、出国ができたとしても手続きやルートを煩雑化させる戦略を中国は取っていると分析。遠回りは台湾の外交関係者の負担やコストが大幅に増大するとして、このような「非正常化」を迫られる妨害が常態化してはならないと警鐘を鳴らした。
ただ、一部の野党から秘密裏の訪問を批判する声が上がっていることについては、「現状を踏まえていない古い見方だ」と反論。総統の外遊が複雑化した要因は中国が台湾の国際的な活躍の空間を徹底的に狭めているためだとし、このような状況下で台湾は必ず難局を突破する手法を考えなければならないと述べた。
その上で、頼総統が友好国や経由地を訪問する際には、正常かつ尊厳のある待遇を受けるべきだと主張。中国の圧力に対して、状況変化への強靱性を示すとともに、国家元首外遊の正常な権利を守る必要があると語った。