(台北中央社)木工が盛んな北部・桃園市大渓区に、日本人の漆芸作家らが技術を教える「大渓漆芸研修所」がある。所長を務める漆芸作家の鳥毛清(とりげ・きよし)さんが5日、取材に応じ、「台湾の漆芸は台湾人が作り上げていってほしい」と願いを語った。
研修所は鳥毛さんと、地元大渓で工芸に携わる陳美霞さんが共に立ち上げたもので、2019年に正式に開所した。
鳥毛さんがこのような形での指導を決意した背景には、台湾における漆芸の歴史も関係している。
日本は戦前、漆不足の解消策として当時植民地だった台湾で漆の栽培を始めた。また香川県出身の漆芸作家、山中公(ただす)氏が中部・台中に渡り、養成所を立ち上げた。山中氏は漆芸の発展に大きく貢献したことから、「台湾漆芸の生みの親」とも呼ばれている。
一方、沈金を専門とする鳥毛さんは2012年から、東京芸術大学で非常勤講師として働く傍ら、中部・南投県の国立台湾工芸研究発展センターで定期的に体験講座の講師を務めていた。その際の受講者からは「もっと教えてほしい」との要望が上がっていた。
数年後、後に漆芸研修所の理事長となる陳美霞さんを紹介され、陳さんが大渓で運営する工芸スペース「C house」でさらに講座を開いた。また、山中氏が終戦に伴う帰国によって後継者育成を断念せざるを得なかった経緯を知ったことも、台湾で指導を行うという選択に影響を与えた。
19年に研修所が正式開所し、約2年間の「第1期」の研修が行われた。その後、23年から先月まで行われた第2期では、台湾各地や香港から集まった若者たちが、約3年間かけて漆芸のいろはを学んだ。現在、大渓で卒業展が開かれている。
研修は毎月10日間前後、集中して行われた。持ち帰っての作業も必要になるため、学業やフルタイムの仕事との両立は難しい。さらに3年間という期間は台湾では非常に長いと受け止められ、説明を聞いた人からは「3カ月ではないのか」と驚く声もあったという。こうした条件の中でも15人が入学し、9人が卒業までこぎ着けた。
研修で鳥毛さんは、自身の専門である沈金を教えた。乾漆や蒔絵(まきえ)、蒟醤(きんま)などの技術は、それぞれの専門家が日本から訪れて指導した。さらに「日本の技術を学ぶことも大事だが、台湾自国の文化を理解することも大事」との考えから、華道や書道、篆刻(てんこく)、木工といった教養科目は主に台湾人が講師を務めた。
取材に応じた3人の卒業生は、この3年間について価値があったと口をそろえる。一方で今後のキャリアについては、漆芸を将来的に自身の職業にしたい人もいれば、別の仕事をしながら創作を続けたいと考える人もいるなどさまざまだった。
研修所の卒業は「本当の人生の始まり」だと語る鳥毛さん。自分の作品を作って世間に紹介し、さらには研修所に戻って先生を務めてほしいとした上で、「最終的に台湾の漆芸は台湾人が作り上げていく」ようになればとの思いも口にした。
卒業展は桃園市立大渓木芸生態博物館内の「大渓公会堂」で今月19日まで行われている。公開時間は毎週月曜を除く午前9時半から午後5時まで。
(田中宏樹、黎桑尼)

