(台東中央社)伝統衣装に身を包んだ台湾原住民(先住民)族の娘が母親から刺繍を教わっている。そんな姿を捉えた一枚が「ソニーワールドフォトグラフィーアワード」で賞を受賞した。撮影したのは東部・台東県に暮らす蔡維宸さん。「受賞して最初に頭に浮かんだのは自分のことではなく、台東のことだ」と自身の土地に対する思いを語った。
同賞では国や地域ごとに優れた作品を表彰する「ナショナル&リージョナルアワード」を設けており、蔡さんの作品が台湾賞に選ばれた。作品は英ロンドンで開催される受賞作品展で展示される。蔡さんは「台湾を代表して受賞したカメラマンになれて光栄だ」と喜んだ。
先住民が集まる集会所で、ルカイ族の母親から刺繍を学ぶパイワン族の娘。異なる部族の2人が優しいほほ笑みをたたえながら、糸と針で模様を紡いでいる。その様子は静かで「とても大事な瞬間だと感じた」と蔡さん。作品には「彼女の手は過去、私の手が受け継ぐ」と名付けた。
蔡さんは、両親が亡くなってから、一緒に撮った写真が一枚もないことに気付き、カメラを手に取るようになった。国軍で約20年間勤務した後、台東で台湾電力の職員として働きながら、身の回りの人々の姿を写真に収め続けている。何か大きな志があるわけではないという。「ただもう後悔したくないだけ」。
近年は、台東の人々や暮らし、日常、文化をカメラで記録し続けている。今回の受賞は単に作品が評価されたことにとどまらず、この物語が記録に値するものだということを改めて気付かせてくれたとし、「台東の物語、文化をより遠くに届けたい。世界の人々に見てもらいたい」と力を込めた。
