台湾のテレビ番組アワード「第51回ゴールデン・ベル・アワード」(電視金鐘奨)の授賞式が8日、台北市の国父記念館で開催された。今回計35部門に昨年より57件多い1949件の応募が寄せられた。栄光に輝いたのは果たしてどの作品か?
◇最高賞の長編ドラマ作品賞は「一把青」
最高賞とされる長編ドラマ作品賞(戯劇節目奨)は、最多12部門(13項目)にノミネートされ、本命視されていた「一把青」が見事受賞。このほか、主演男優賞、新人賞、監督賞(いずれも長編ドラマ部門)、照明賞、美術デザイン賞も獲得し、今回最多の6部門を制覇した。
同作は1945年から1981年までの狂乱怒涛の時代を背景に、空軍パイロットとその家族の悲痛な人生を描き出した歴史大作。元国防部長を父に持つ作家、白先勇の同名小説を原作とし、総製作費1億台湾元(約3億2200万円)以上を投じて製作された。
作品賞で名前が呼ばれると、ガッツポーズを見せたツァオ・ルイユエン(曹瑞原)監督。ノミネートされながらも受賞は逃した出演者のシェリル・ヤン(楊謹華)とティエンシン(天心)には「私にとっては最高の役者」とあたたかい言葉を掛け、撮影中の努力をねぎらった。
ツァオ監督は監督賞受賞後、「多くの人が台湾の戦争の歴史に関する作品を撮ってくれれば」とした上で、台湾ではドラマといえば主にアイドルドラマしかない現状に言及し、「多様化する必要がある」と苦言を呈した。また、同作は脚本賞の受賞こそは逃したが、ツァオ監督はシナリオが素晴らしかったと称え、賞を脚本家に捧げたいと語った。
◇長編ドラマ主演賞はクリス・ウーとアリス・クーがともに初受賞
主演男優賞に輝いたのは、「一把青」で人情味あふれる空軍パイロットのクオ・ジェン(郭軫)を好演したクリス・ウー(呉慷仁)。主演賞は初受賞。金鐘奨全体での受賞は昨年のミニドラマ部門助演男優賞に続き2年連続となった。
クリスの受賞が明らかになると、プレスルームでは大歓声が。クリスに対する支持の高さが伺えた。舞台裏では「台湾にはまだ埋もれている俳優がたくさんいる。もっと多くの題材が必要」と話し、政府に対してテレビ産業へのより多くの支持を求めた。取材後にはプレスルームで取材陣とともに主演女優賞の発表を見守ったクリス。だが、共演者のシェリルやシンディー・リエン(連兪涵)が受賞を逃したことがわかるとすぐに舞台裏にさがり、会場を笑わせた。
主演女優賞は「結婚なんてお断り!?」(必娶女人)で、仕事を勝ち取るためには手段を選ばない敏腕の会社員、ホァンジェン(環真)を演じたアリス・クー(柯佳[女燕])。初ノミネートにして初受賞となった。
名前が呼ばれると両手で顔を覆い、信じられないといった表情を見せたアリス。ステージに立つと涙で声を詰まらせながら関係者に感謝を示した。撮影中は厳格なチュンチュン・ユー(于中中)監督のせいで辛かったと本音をもらしながらも、「この賞をもらったから許します」とユーモアたっぷりにスピーチ。テレビ画面には、共演者のロイ・チウがアリスの感激に満ちたスピーチに目を潤ませ、暖かい拍手を送る姿も写し出された。
◇新人賞はシンディー・リエン
長編ドラマ部門の新人賞には、「一把青」のシンディー・リエンが選ばれた。国共内戦時代における悲痛な死別を経て、純朴な女学生から妖艶な女性へと変貌を遂げる難易度の高い役を見事に演じたことが評価された。
シンディーは同作がドラマ初出演ながらも、これまでにミュージックビデオ(MV)やショートフィルム、舞台などに多数出演しており、演技の実力を培っていた。今年に入ってからはTVドラマ「我的極品男友」に主演するなどし、お茶の間に姿を見せる機会も徐々に増えている。
シンディーは緊張と喜びが混ざったような表情でステージに立ち、「『一把青』は私にとって初めてのドラマ。私の初恋」と表現。スピーチの最後には「私はシンディー・リエン。『私は役者です』とみなさんに伝える機会を得られて光栄です」と感慨深げに語り、世間に自身の存在を印象づけた。
◇ミニドラマ・テレビ映画部門は「川流之島」が圧勝
ミニドラマ・テレビ映画部門では、テレビ映画「川流之島」が作品賞、主演女優賞、新人賞、監督賞、脚本賞の5冠に輝いた。
同作は失業の危機に面した高速道路料金所で働く女性とトラック運転手の出会い、シングルマザーと反抗的な息子の親子愛を描いた作品。
全受賞者リストはこちら(中国語)
https://www.cna.com.tw/news/firstnews/201610085006-1.aspx