(台北中央社)日本の洋画家、浅井忠(1856〜1907年)が描いた油絵「湯島聖堂大成殿」が9日、台北市の文化資産(一般古物)に指定された。日本による台湾統治が始まった1895(明治28)年に創立された「芝山巌学堂」に端を発する、台北市の士林小学校が日本統治時代から長年にわたって受け継いできた作品で、同校が文化資産への指定を申請した。
歴史資料の管理などを行う台北市立文献館が発表した。同館によれば作品は96(同29)年、芝山巌学堂の教師ら日本人7人が日本統治に反対する勢力に殺害された事件の発生を受け、日本の教師らが浅井に制作を依頼。東京の孔子廟である湯島聖堂を題材にすることで、日本人が台湾人と同じように孔子の教育思想を尊んでいると世に知らせることを狙ったという。
同館は同作品について、浅井の中年期の極めて緻密で整った画風を反映しているだけでなく、1923(大正12)年の関東大震災で焼失した当時の湯島聖堂の姿を伝える貴重な記録でもあると説明。現在は同市立美術館で適切に収蔵されているとした。