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第3原発の再稼働賛否問う国民投票、23日実施 賛成・反対両派の主張は/台湾

2025/08/19 16:49
運転を停止した台湾電力第3原子力発電所(中央社資料写真)
運転を停止した台湾電力第3原子力発電所(中央社資料写真)

台湾電力(台電)第3原子力発電所(南部・屏東県)の再稼働の賛否を問う国民投票が23日に実施される。第3原発は今年5月に台湾の原発で唯一稼働していた2号機が運転を停止したばかり。国民投票を前に、賛成派と反対派の主張や成立の条件をまとめた。

▽国民投票を発起したのは?

実施案は第2野党の民衆党が今年4月に提出。5月20日に立法院(国会)で野党の賛成多数で実施が決まった。国民投票の主文は「第3原発が主務機関の同意を経て、安全性が確認された後に運転を継続することに同意するか」。

▽台湾の電力供給と原発

1978年、台湾で最初の原発(第1原発1号機=北部・新北市)が正式に商業運転を開始し、85年には全発電量に占める原子力の割合が52.4%に達した。だが反原発運動の盛り上がりやエネルギー政策の転換を背景に、電力供給の主力は液化天然ガス(LNG)となり、2024年には原発の割合は4.7%にまで低下した。

18年12月以降、3原発、計6機が相次いで40年間の運転期間を終え、今年5月17日、台湾で最後の原発である第3原発2号機が運転を終えて、台湾は「原発ゼロ」となった。

台湾の各原子力発電所の位置。「核一廠」は第1原発、「核二廠」は第2原発、「核三廠」は第3原発、「核四廠」は第4原発。第4原発は未稼働=中央社作図
台湾の各原子力発電所の位置。「核一廠」は第1原発、「核二廠」は第2原発、「核三廠」は第3原発、「核四廠」は第4原発。第4原発は未稼働=中央社作図

▽再稼働賛成・反対、それぞれの意見

【賛成】

民衆党:新エネルギー開発の伸び悩みやエネルギー事業を巡る相次ぐ不祥事、台湾電力のコスト高による巨額赤字などを指摘。国際社会で電源としての原発の可能性が見直されている他、日本も複数の原発を再稼働させていることなどを提案理由に挙げた。

理由書:原発は電力の安定供給、二酸化炭素(CO2)排出量の少なさという二つの強みを備える。エネルギー輸入依存度が高い中で、中国による台湾の経済封鎖などの安全保障上のリスクに備え、一定程度運転可能な原発施設を保つべき。

【反対】

全国廃核行動平台:第3原発はユーラシアプレートがフィリピン海プレートの下に沈み込んでいるマニラ海溝の北側に位置するため、台湾全土で地震のリスクが最も高い。原発の運転期間延長のコストは高く、コストを削減できないだけでなく、巨額の支出と高レベル放射性廃棄物の最終処分場の問題も発生する。台湾電力は依然として最終処分場を見つけられていない。

屏東県政府原子力安全監督会議(今年6月)に出席の専門家:地方政府と地域住民はすでに第3原発のリスクを40年余り負った。運転終了は社会の共通認識であり、民主主義の手続きの成果である。突如降って湧いた国民投票は手続的正義や地方の権益への挑戦だ。

▽住民の意見

【反対】

第3原発10キロ圏内の頭溝里に家族代々暮らす張道宏さん:台湾は土地が狭いため人口密度が高く、原発災害には耐えられない。断層上にある第3原発はリスクがさらに高く、核のごみの最終的な処分についての方策が依然として決まっていない。

屏東で個人書店を営む翁禎霞さん:原発で災害が発生すれば、それは世代を超えて向き合う問題になる。それにもかかわらず、33文字(※主文の中国語の字数)の国民投票で再稼働の是非を決めることになった。エネルギー問題は専門的な問題だ。軽率に国民投票に委ねるべきではない。

【賛成】

屏東環境保護聯盟・張怡則理事:第3原発の運転が終了しても土地は地域に戻ってこない。反対に大量の太陽光パネルが入り込み、不動産価格のつり上げや景観破壊などの問題が生じる。どちらかといえば原発の利用によって再生可能エネルギーの発展を推し進めることに賛成だ。

一部住民:第3原発によって地域の就業機会が創出される。台湾電力は周辺地域への還元も多く、原発が閉鎖されると還元が縮小する可能性がある。

▽政府の立場

行政院(内閣):第3原発の運転許可はすでに期限を迎えた。すぐに運転を再開する余地はない。運転延長のニーズがあったとしても、国民の安全を優先的に考え、検査と評価を行う。

核能安全委員会(原子力安全委員会):原発再稼働には、安全性、放射性廃棄物、社会の合意の三つの条件を満たす必要がある。運転許可期間の40年を過ぎた後に安全に運転できるかは、評価して初めて確認できる。台湾電力が運転延長を申請しても、安全委が安全性に懸念があると判断すれば却下できる。

▽成立要件とその後の動き

投票の結果、賛成票が反対票を上回り、かつ有効賛成票が有権者数の4分の1以上に達すれば成立する。

成立すれば、総統または管轄省庁が実現に必要な手続きを取る必要がある。不成立の場合、今後2年間は同一事項での国民投票の提案はできない。

▽原発に関する過去の国民投票

原発に関する国民投票はこれまでに2018年と21年の計2回行われた。

2018年の国民投票では、電業法の「2025年までの原発設備全て運転停止」の条文の廃止について是非を問い、可決された。投票結果を受け、当該の条文が電業法から削除された。

21年には第4原発稼働の賛否を問う国民投票が行われ、原発所在地の新北市や屏東県を含む10県市で反対が賛成を上回るなどして不成立となった。

原発に関する過去の国民投票での各県市の結果。赤が濃くなるほど賛成票が多く、青が濃いほど反対票が多かったことを示す=中央社作図
原発に関する過去の国民投票での各県市の結果。赤が濃くなるほど賛成票が多く、青が濃いほど反対票が多かったことを示す=中央社作図

(編集:名切千絵)

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