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「天橋上的魔術師」が最多6冠 第56回電視金鐘奨授賞式<詳報>/台湾

2021/10/19 06:37
ステージ上に勢揃いした「天橋上的魔術師」チーム(三立テレビ提供)
ステージ上に勢揃いした「天橋上的魔術師」チーム(三立テレビ提供)

(台北中央社)台湾のテレビ番組の祭典「第56回ゴールデン・ベル・アワード」(電視金鐘奨)授賞式が10月2日、台北市の国父紀念館で開かれた。この記事では、ドラマ部門を中心に受賞結果や受賞コメントなどを紹介する。

▽「天橋上的魔術師」が最多6冠

 連続ドラマ作品賞を含む最多6冠を制したのは「天橋上的魔術師」。呉明益の連作短編集「歩道橋の魔術師」を原作とした作品で、台北にかつて実在した複合施設「中華商場」を舞台に、魔術師と子供の交流を描いた。ドラマ制作に当たっては、台北郊外に8000万台湾元(約3億円)を投じて台湾ドラマ史上最大のオープンセットを建設し、1980年代の中華商場を再現。ヤン・ヤーチェ(楊雅喆)監督がメガホンを取り、ミステリアスな魔術師をカイザー・チュアン(荘凱勛)が演じた。 電視金鐘奨では、連続ドラマ作品賞のほか、同監督賞、同新人俳優賞、ドラマ番組撮影賞、美術賞、照明賞を受賞した。

  ヤン監督の金鐘奨受賞は2002年以来19年ぶり。ヤン監督は監督賞の受賞スピーチで「きょう、このステージに立てたのは裏方の数百人にも上るスタッフや役者の努力のおかげ」と感謝した。また「私はドラマが好き。学校では教えてくれない恋愛をドラマは予習させてくれる。まだ直面していない老いや病気、死をドラマは先に見せてくれる」とドラマ作品への熱い思いを示した。一方、プレスルームでの取材では、「失われたもの」を扱った同作の撮影では心に大きな負荷がかかり、撮影終了後に心療内科に通っていたことを告白。しかし今回の受賞で「心が晴れた」と喜んだ。ドラマを再び撮影したいか聞かれると「本当に消耗するんですよ。身体と心の両方で」と本音を明かしつつ、「良い題材があれば撮る」と話した。 

監督賞受賞後、プレスルームでトロフィーを掲げるヤン・ヤーチェ監督(三立テレビ提供)
監督賞受賞後、プレスルームでトロフィーを掲げるヤン・ヤーチェ監督(三立テレビ提供)
 主人公の少年・小不点を演じたリー・イーチャオ(李奕樵)は連続ドラマ新人賞を受賞した。撮影時は10歳。現在は弱冠12歳ながら堂々としたスピーチを披露し、作品の内容にからめ「僕の99階の不思議な空間にまた素晴らしい宝物が増えました」と感慨深げに語った。プレスルームでは「縁があればまた演じたい」と語り、アクション作品への出演に意欲をみせた。連続ドラマ主演男優賞にもノミネートされていたが、受賞は逃した。「我的婆婆怎麼那麼可愛」で同賞の候補だったシュー・ジエホイ(許傑輝)から「12歳で(主演男優賞も)受賞したら後は落ちていくだけだよ」と言われていたと冗談交じりに明かし、取材陣を笑わせる一幕もあった。
ステージで連続ドラマ新人賞の受賞スピーチをするリー・イーチャオ(李奕樵)=三立テレビ提供
ステージで連続ドラマ新人賞の受賞スピーチをするリー・イーチャオ(李奕樵)=三立テレビ提供
 「天橋上~」の作品賞選出について、審査委員会トップを務めたツァオ・ルイユエン(曹瑞原)監督は「一定の質が維持されていたため」と説明。同作を巡っては時代考証や中華商場の再現において物議があったものの、審査員の3分の2が中華商場の黄金時代を経験していない世代であり、同施設をファンタジックに表現した点を高く評価したと明かした。「映像産業が世界に羽ばたくことを考えると、外国人にとってこの作品は良作だ」と述べた。

  昨年放送されて高視聴率を記録したホームドラマ「我的婆婆怎麼那麼可愛」は作品賞受賞を逃した。ツァオ監督はタン・アンニン(鄧安寧)監督のユーモア感や独特の手法を称賛しつつも「こだわりが少し不足し、やや妥協があった」と指摘した。

 ▽元ダマウスのシュエ・シーリンが連続ドラマ主演賞&ミニドラマ助演賞W受賞

  連続ドラマ主演男優賞とミニドラマ助演男優賞はシュエ・シーリン(薛仕凌)がダブル受賞した。シーリンは2016年に解散したヒップホップグループ、大嘴巴(ダマウス)でラッパー「MC04」として活躍。近年は俳優業に力を入れており、今回の金鐘奨で一気にその実力を評価された。

連続ドラマ主演男優賞を受賞し、トロフィーを高く掲げるシュエ・シーリン(三立テレビ提供)
連続ドラマ主演男優賞を受賞し、トロフィーを高く掲げるシュエ・シーリン(三立テレビ提供)
 シーリンは「生生世世」で連続ドラマ主演男優賞を、「做工的人」でミニドラマ助演男優賞を受賞した。「生生~」は1950、60年代を舞台に助産師の女性の物語を描く時代ドラマ。平日夜8時に毎日放送される帯ドラマとして制作された。同時間帯の帯ドラマは「八點檔」と呼ばれ、話数が長く、通俗的な内容であることが多いことから、賞レースで評価されるのは異例。

 シーリンは同作で、幼なじみの男性に恋心を抱くも気持ちを抑え込むことを余儀なくされる裕福な家庭の青年に扮した。工事現場の作業員の生き様を描いた「做工的人」で演じたのは、衝動的な性格ながらも情に厚い青年。全く異なる2つの役でそれぞれ高い評価を得た。

  主演男優賞で名前が呼ばれた際、座席で「信じられない」というような困惑した表情を浮かべたシーリン。プレスルームでは「八點檔は特殊で、あまり評価されるチャンスがないから、ノミネートされただけで嬉しかった」と述べ、「本当に幸運。10年同じことをやり続けてきてノミネートされ、2つも賞を穫れるなんて思わなかった」と喜びを噛みしめた。

 シーリンの主演男優賞受賞についてツァオ氏は「八點檔のドラマであっても、繊細に演じることを諦めなかった」と評価した。

 ▽連続ドラマ主演女優賞は「我的婆婆~」のチョン・シンリン

  連続ドラマ主演女優賞は、台南の伝統菓子店を舞台にしたホームコメディー「我的婆婆怎麼那麼可愛」で菓子店の女主を演じたコミカルに演じたチョン・シンリン(鍾欣凌)が獲得した。

連続ドラマ主演女優賞を受賞したチョン・シンリン(三立テレビ提供)
連続ドラマ主演女優賞を受賞したチョン・シンリン(三立テレビ提供)
 シンリンは現在49歳ながら、「我的婆婆~」で演じたのは60代の姑。演じるのが難しいコメディードラマにあって、喜怒哀楽を正確につかみ、感情を繊細に表現したとして評価された。

 シンリンは目をうるませながらスピーチし、「視聴者のみなさん、作品を愛してくれてありがとう。一緒に嫁を叱って、一緒に息子を可愛がって、一緒に笑って、一緒に怒り、悲しんでくれた。演技をするのは楽しいこと。全てのテレビ人、そしてテレビ番組を愛してくれる全ての人に感謝します」と力強く語った。

  この役は役者として「待ちに待った役だった」と取材で明かしたシンリン。昨年公共テレビで放送され、全40話の平均視聴率は連続ドラマとして同テレビ局史上最高を記録するほどの人気を博した。来年には映画版とドラマ続編の撮影が予定されているという。

「我的婆婆怎麼那麼可愛」劇中写真(myVideo提供)
「我的婆婆怎麼那麼可愛」劇中写真(myVideo提供)
 ▽アーロンが初の「三金」受賞「自由奔放な思想を持てる場所に生まれた」

 歌手で俳優のアーロン(炎亞綸)は、星座専門家のジェシー・タン(唐綺陽)やサンディー(呉姍儒)と3人で司会を務めるトーク番組「36題愛上你」でバラエティー番組司会者賞を受賞した。台湾で「三金」と呼ばれる芸能界の権威ある賞(金曲奨=音楽、金鐘奨=ラジオ・テレビ、金馬奨=映画)をアーロンが受賞するのはデビュー17年で初めて。

バラエティー番組司会者賞を受賞したアーロン(三立テレビ提供)
バラエティー番組司会者賞を受賞したアーロン(三立テレビ提供)
 アーロンは受賞スピーチで、これまでの芸能人生は山あり谷ありだったことを振り返り、今回の賞は「大海原の浮き木のよう」だと形容。「自由で奔放な思想を持てる場所に生まれた。僕たちには明るい前途があることを信じている」と力強く述べた。また、プレスルームでの取材では、授賞式会場でドラマ部門の入選者らの座席が右側に配置されていたことから「来年は右側にいたい」と次回は俳優としてノミネートされることを願った。

 ▽司会を務めたのは人気ユーチューバー・視網膜 インターネット番組が初めて応募対象に

 これまではテレビ番組のみを応募対象としてきた電視金鐘奨。だが近年のインターネット配信の台頭を受け、今年は初めて、バラエティー番組部門とクイズ・リアリティー番組部門の2部門において、インターネットで配信された番組に応募資格が与えられた。

 また、今年の授賞式の司会には人気ユーチューバーの視網膜(陳子見)を起用。視網膜は2019年の電視金鐘奨授賞式でも人気司会者のミッキー・ホアン(黄子佼)やユーチューバーのアリーナ・チェン(鄭茵聲)と共に司会を担当したが、今回は初めて単独で大役を担った。

司会を務めた視網膜(三立テレビ提供)
司会を務めた視網膜(三立テレビ提供)
 ▽動力火車がドラマ部門作品賞ノミネート作の楽曲をメドレーで披露
動力火車によるパフォーマンス。背後のスクリーンには、各ドラマの名シーンが写し出された(三立テレビ提供)
動力火車によるパフォーマンス。背後のスクリーンには、各ドラマの名シーンが写し出された(三立テレビ提供)
 受賞者発表の合間に行われたパフォーマンスでは、ドラマ部門にノミネートされた作品の名場面を1本にまとめた映像が流された後、2人組ユニット「パワーステーション」(動力火車)が連続ドラマ作品賞とミニドラマ作品賞にノミネートされた作品を彩った楽曲10曲をメドレーで披露。力強い歌声で会場を盛り上げた。動力火車はミニドラマ作品賞を受賞した「做工的人」のエンディング曲「永遠不再」を担当した。

 ▽式典を彩った華やかなプレゼンター

 式典には人気俳優らがプレゼンターとして出席し、華を添えた。

 ジョセフ・チェン

レッドカーペットを歩くジョセフ・チェン
レッドカーペットを歩くジョセフ・チェン

  台湾では久しく公の場に出ていなかったジョセフ・チェン(鄭元暢)は、レッドカーペットでのインタビューで「好久不見」(お久しぶりです)とあいさつ。6年ぶりの台湾ドラマ出演作となる 「無神之地不下雨」が10月17日から放送開始されるのに合わせ、同作をPRした。同作は、2019年に台湾で放送されて話題を集めたドラマ「時をかける愛」(想見你)のスタッフが手掛ける新作で、神話を題材としたラブストーリー。ジョセフは「風の神」の役で特別出演する。

ワン・ジン&ツォン・ジンホア

レッドカーペットに2ショットで登場したワン・ジンとツォン・ジンホア。式典では別々にプレゼンターを務めた。
レッドカーペットに2ショットで登場したワン・ジンとツォン・ジンホア。式典では別々にプレゼンターを務めた。

 ミニドラマ作品賞にノミネートされた「返校」の映画版に主演したワン・ジン(王淨)とツォン・ジンホア(曽敬驊)もプレゼンターとして登場。レッドカーペットでは、ドラマ版の受賞にエールを送った。

 ▽その他各部門の作品賞

 最後に各部門作品賞受賞作や主な個人賞受賞者をまとめて紹介する。

 ミニドラマ作品賞:做工的人 

「做工的人」チーム
「做工的人」チーム
林立青の同名エッセーを原作とした作品。工事現場で働く人の日常や苦悩を描いた。台湾ドラマとして初めて、大規模な工事現場で撮影したことでも注目を集めた。今回の金鐘奨では作品賞のほか、ミニドラマ主演男優賞、同助演男優賞、同監督賞の4冠に輝いた。式典では、映画版が製作されることも明かされた。

 テレビ映画賞:主管再見

 サイエンス番組賞(自然科學紀實節目獎):福爾摩沙守謢者

  台湾の山や海を舞台として、気候変動と過度な開発の下で台湾の生態環境や希少種が受けた傷について考えていく番組。500日余りに渡り撮影が行われた。

 芸術・文化番組賞(人文紀實節目獎):不羈─臺灣百年流變與停泊

  文化史の角度から、台湾で生まれた「自由の力」を探っていく番組。

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子供番組賞:kakudan時光機

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アニメーション番組賞:未来宅急便

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ライフスタイル番組賞:誰來晚餐12 

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バラエティー番組賞:菱格世代DD52 

 女性グループのメンバーを選ぶオーディション番組。人気歌手のウィルバー・パン(潘瑋柏)とレイニー・ヤン(楊丞琳)がメンターを務めた。

革新番組賞:全明星運動会

クイズ・リアリティー番組賞:全明星運動会

連続ドラマ助演男優賞:Darren(邱凱偉)/我的婆婆怎麼那麼可愛

連続ドラマ助演男優賞を受賞し、ステージで喜びを爆発させるDarren
連続ドラマ助演男優賞を受賞し、ステージで喜びを爆発させるDarren
 亡くなった父親に「金鐘奨を獲る」と誓っていたエピソードを明かし、「やったよ!」とトロフィーを高く掲げて喜んだ。

連続ドラマ助演女優賞:ジエン・マンシュー(簡嫚書)/她們創業的那些鳥事

連続ドラマ助演女優賞を受賞したジエン・マンシュー
連続ドラマ助演女優賞を受賞したジエン・マンシュー
 スピーチの途中、感極まった様子で「泣きそう」と可愛らしく言った後、声をつまらせたマンシュー。金鐘奨は初受賞となった。受賞作「她們創業的那些鳥事」は柴門ふみ原作の漫画「お仕事です!」を原作にしている。

特殊貢献賞:レン・リーユー(任立渝)=気象キャスター

特殊貢献賞の受賞後、あすの天気予報を披露するレン・リーユー(任立渝、中央)
特殊貢献賞の受賞後、あすの天気予報を披露するレン・リーユー(任立渝、中央)

 半世紀にわたり、気象予報官として活躍。1993年に中央気象局を退職後、気象キャスターに転身し、複数のテレビ局で天気予報を伝え続けてきた。今年5月末に引退した。気象キャスターが金鐘奨を受賞するのは初。「テレビに携わる全ての人が、力を尽くせば評価されるということ」と優しいまなざしで語り、「もっと気象に関心を持ってもらえれば」と願った。司会者の促しで、あすの天気予報を披露する一幕もあった。

 (名切千絵)

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