ホアン・ハーさん「より多くの想像力を」 主演作で伝えたい思い/台湾

2021/08/17 05:56
ホアン・ハーさんⒸ巴萬
ホアン・ハーさんⒸ巴萬

新型コロナウイルスの感染拡大によって、多くの人の生活が一変した。外出自粛の影響で家族と向き合う時間が増えたことで、家庭内不和が生じたケースなども報じられている。現代社会における家族関係に切り込んだ台湾映画「よい子の殺人犯」(最乖巧的殺人犯)で、家庭内に問題を抱える青年・アナンを演じた俳優のホアン・ハー(黄河)さんは「世界には自分を愛してくれる人がたくさんいる。自分を愛することがとても重要」だと呼び掛けた。リモート形式で中央社のインタビューに答えた。 同作の主人公・アナンは社会から「負け犬」のレッテルをはられたアニメオタク。人と争うことが嫌いで、善良な心を持つ。母親と認知症の祖父の3人で静かに暮らしていた家にある日突然、博打で失敗したおじが転がり込んできたことで家庭内が不穏な空気に包まれる中、アナンは恋愛でも失意のどん底に落とされ、ある事件を起こしてしまうー。作品には、貧困や孤独、引きこもりなどの社会問題も盛り込まれた。監督はジャン・ジンシェン(荘景燊)。

  繊細な青年が追い込まれて爆発してしまう姿を描いた同作を通じて、「他人に対してより多くの理解を示し、もっと広い心を持つ」ということを感じ取ってほしいと語るホアンさん。「人間は、見えている部分がその人の全てではなく、見えているのはその人の表面にすぎない。人にはいろいろな面がある。アナンの物語を通じて、他人にもう少し想像力を働かせて、もう少しだけ相手を理解し、受け入れるという心を持ってもらえれば」と呼び掛けた。

「よい子の殺人犯」場面写真Ⓒ2019 ANZE PICTURES Co. , Ltd. ALL RIGHTS RESERVED
「よい子の殺人犯」場面写真Ⓒ2019 ANZE PICTURES Co. , Ltd. ALL RIGHTS RESERVED
  ▽ 自身も「アニメオタク」 東京では秋葉原に

  さわやかなイメージが強いホアンさんだが、今作ではイケメンを封印。陰鬱な雰囲気のオタクに変身している。役作りについては「特に意識したことはない」とあっさり。「オタクは外へ出かけることが少なく、人と会う機会もあまりない。だから、自然のままであまり作り込まないようにした」という。メイクは3分で完了、ヘアスタイルも特に整えず、自然な状態でカメラの前に立った。

  ホアンさんとアナンには実は共通点がある。それは「アニメオタク」だということ。作品中には、アナンが夢中になっているアニメとして、この映画のために作られた「ボビッター」というアニメが登場し、アナンの部屋にはボビッターのグッズが所狭しと飾られた。これによって「心の中のオタク魂が引き出された」と笑うホアンさん。私生活では、プラモデルやフィギュア、ゲームなどが集まる台北の商業ビル「万年商業大楼」や「光華商場」に足を運ぶほか、「街でガチャガチャを見つけたら1台1台見て回ってしまう」と意外な趣味を告白。東京の秋葉原を訪れた際には、ずっといても飽きないため、あやうく出られなくなってしまうところだったと冗談交じりに明かした。

アニメ「ボビッター」のTシャツを着るアナン(右)=「よい子の殺人犯」場面写真Ⓒ2019 ANZE PICTURES Co. , Ltd. ALL RIGHTS RESERVED
アニメ「ボビッター」のTシャツを着るアナン(右)=「よい子の殺人犯」場面写真Ⓒ2019 ANZE PICTURES Co. , Ltd. ALL RIGHTS RESERVED
 ▽ 「人間性の異なる一面を探り、それを表現したい」

 ホアンさんは近年は今作をはじめ、影のある難しい役を多く演じている。2020年の東京国際映画祭で上映された「悪の絵」(惡之畫)で絵の才能を持つ服役中の殺人犯を好演したほか、Netflixのオリジナルドラマ「次の被害者」(誰是被害者)では初めてトランスジェンダー役に挑戦した。

  複雑な背景を持つ人物を数多く演じていることについて、ホアンさんは「理由は『オファーがあった』。ただそれだけ」と飄々と語る。だが、「オファーを受ける上で基準があるかといえば、ある。それは『脚本』」だと明かす。

  「演じる役が良い人か悪い奴か、かっこいいか殺人犯かなのかは、決して基準にはならない。基準は脚本がいいか、物語がいいか」なのだと脚本を重視する姿勢をのぞかせた。

  「人間性の異なる一面を探り、それを表現したいとずっと思ってきた」と演技にかける信条を明かしたホアンさん。例えば悪役を演じる場合は、いい人のように演じられないか考えることもある。「物語の中で恐ろしいことをしているけれど、実は心がきれいで、善行をたくさんしているみたいな」。演じる役が知らず知らずのうちにステレオタイプな人物になってしまわないように、異なる一面性を探るようにしているのだという。

 ▽ 自分の生活に改めて向き合った自粛期間 

  台湾では5月中旬ごろから新型コロナの感染が急拡大し、ステイホームが推奨された。映像業界でも撮影が中止になったほか、記者会見などもリモートに切り替えられた。自粛期間中には「自分の生活に改めて真剣に向き合い、自分の生活を改めて整理する」ということを強く感じたとホアンさんは語る。「これまでは仕事の関係で、いわゆる『生活』というものをないがしろにしていた。生活といえば、家に帰って寝るだけだった」とコロナ前の日常を振り返る。だが、コロナ禍で家にいる時間が増え、「生活をきちんと整理しよう」との考えが芽生えたという。

  おうち時間では「仕事以外の時間は自分に言い訳をせず、自分のしたいことをしている」と明かしたホアンさん。掃除をしたり、花に水をあげたり、犬や猫と遊んだり、運動をしたり、ドラマを見たりといった普通の日常生活を楽しむほか、時間がある時には絵を描いたり、写真を撮って自分で現像したりといった創作活動も行っているといい、充実した巣ごもり期間を過ごしている様子を伺わせた(※インタビューは新型コロナの警戒レベルが第3級だった7月中旬に実施)。

 仕事の面では、脚本を読み込んだり、監督とリモートで会議をしたりと家でもできることに取り組むほか、オンラインで演技を教えるワークショップも開始した。「すごく大変で難しい」と打ち明けながらも、新たな挑戦への意欲をのぞかせた。

 「よい子の殺人犯」は来月3日に日本版DVDが発売される。(名切千絵)

「よい子の殺人犯」日本版DVDジャケット写真Ⓒ2019 ANZE PICTURES Co. , Ltd. ALL RIGHTS RESERVED
「よい子の殺人犯」日本版DVDジャケット写真Ⓒ2019 ANZE PICTURES Co. , Ltd. ALL RIGHTS RESERVED
私たちはあなたのプライバシーを大切にします。
当ウェブサイトは関連技術を使用し、より良い閲覧体験を提供すると同時に、ユーザーの個人情報を尊重しています。中央社のプライバシーポリシーについてはこちらをご覧ください。このウインドウを閉じると、上記の規範に同意したとみなされます。